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できることはやってもらう看護とは?自立支援と介助の考え方

「患者さんができることまで、看護師が手伝ってはいけないの?」

「自立支援が大切なのはわかるけれど、どこまで患者さんにやってもらえばいいの?」

この記事では

  • 看護で「できることはやってもらう」理由
  • 患者さんの自立を支えるためのADLの見方
  • 見守り・一部介助・全介助を判断するポイント

が分かりますよ♪

結論👉

「できることはやってもらう」とは、患者さんを放っておくことではありません。
患者さんが持っている力を活かしながら、難しい部分や安全面で援助が必要な部分を看護師が支えることが大切です。

患者さんのためを思って、食事や着替え、移動などをつい先回りして介助してしまうこともありますよね。
しかし、「全部やってあげること」が必ずしもその人のためになるとは限りません。

この記事では、看護で「できることはやってもらう」といわれる理由から、ADLや残存機能の考え方、過介助を防ぎながら適切な援助量を判断するポイントまで、新人看護師さんにもイメージしやすいようにやさしく解説します😊

看護で「できることはやってもらう」のはなぜ?

看護で「できることはやってもらう」のはなぜ?

新人看護師さんのなかには、「患者さんのお世話をするのが看護なのに、自分でやってもらっていいの?」と疑問に感じる方もいると思います。

もちろん、患者さんができないことを援助するのは看護師の大切な役割です。
しかし、患者さんが自分でできる動作まで先回りして介助すると、その人が持っている力を使う機会を減らしてしまうことがあります。

「できることはやってもらう」とは、患者さんに任せきりにすることではなく、その人の力を活かしながら必要な部分を支えることです。

できることをやってもらうのは自立支援のひとつ

看護における自立支援では、看護師がすべてを代わりに行うのではなく、患者さん自身が持っている能力を活かせるように支援します。

たとえば、更衣に時間がかかる患者さんがいたとします。

時間がかかるからと看護師が最初から最後まで着替えさせるのではなく、「上衣は自分で着られるけれど、ズボンを上げるのは難しい」のであれば、難しい部分を中心に援助します。

このように、患者さんの「できる部分」と「援助が必要な部分」を分けて考えることがポイントです。

キャラ

「できる・できない」の二択で考えなくても大丈夫です😊
「ここまでは自分でできる」という部分を見つけることも、看護師の大切なアセスメントですよ。

全部介助すると患者さんの「できること」を奪う可能性がある

患者さんにとって楽だからと、何でも看護師が代わりに行えばよいわけではありません。

たとえば、自分でベッドから起き上がれる患者さんでも、毎回看護師が起こしていれば、自分で身体を動かす機会が少なくなります。

入院中は、疾患や治療による安静、活動量の低下などによって身体機能が低下することがあります。
そのため、患者さんの状態に応じてADL(日常生活動作)や残存機能を活かす視点が大切です。

看護で「できることはやってもらう」のはなぜ?

ただし、「動かないと機能が落ちるから」と無理に行ってもらうのも適切ではありません。

疼痛や呼吸困難、発熱、疲労、めまいなどがある日は、昨日までできていた動作が難しくなることもあります。

「この患者さんはできる人」と固定して考えず、その日の状態を確認して援助量を調整することが重要です。

「やってあげる看護」だけが優しい看護ではない

忙しそうにしている患者さんを見ると、「私がやりますよ」と手伝いたくなることもありますよね。

その気持ちは大切ですが、看護では「今、患者さんが楽になるか」だけでなく、退院後や今後の生活まで見据えて援助する必要があります。

たとえば、退院後に自宅で着替える必要がある患者さんなら、入院中から自分でできる動作を続けてもらうことも、その人の生活を支える看護につながります。

反対に、転倒する危険が高い患者さんや、治療上安静が必要な患者さんにまで「自分でできるから」と任せるわけではありません。

大切なのは、患者さんに何でもやってもらうことではなく、「できるか」「安全にできるか」「どの部分に援助が必要か」をアセスメントすることです。

つまり、「できることはやってもらう」という言葉の本当の意味は、看護師が手を出さないことではありません。
必要なときには支えながら、患者さん自身の力をできるだけ活かすことなのです🌸

患者さんにできることをやってもらうメリット

患者さんにできることをやってもらう理由は、「自立してもらうため」だけではありません。

食事や更衣、排泄、移動などの日常生活動作は、患者さんにとって身体を動かす機会でもあります。また、自分でできた経験は自信につながり、退院後の生活を考えるうえでも大切です。

ここでは、できることを患者さん自身に行ってもらうメリットを、看護の視点から整理していきましょう。

ADLや残存機能の維持につながる

ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)とは、食事、更衣、排泄、入浴、移動など、日常生活を送るために必要となる基本的な動作のことです。

患者さん自身ができるADLを継続することは、その人が現在持っている残存機能を活かすことにつながります。

たとえば、右手が動かしにくくても左手でスプーンを持てる患者さんなら、最初から食事を全介助するのではなく、自分で食べられる方法を一緒に考えることができます。

また、ベッド上で自分で寝返りができる、手すりを使用すれば立ち上がれるなど、患者さんによって「できること」は異なります。

患者さんが今持っている力を見つけ、それを日常生活のなかで活かすことが、自立支援の基本になります。

廃用症候群を予防することにつながる

入院中は、病気や治療によってベッド上で過ごす時間が増えることがあります。

身体を動かさない状態が続くと、筋力や持久力の低下、関節が動かしにくくなるなど、さまざまな身体機能の低下につながることがあります。
このように、安静や活動量の低下などによって生じる心身機能の低下を廃用症候群といいます。

そのため、医学的に活動が許可されている患者さんでは、食事のために身体を起こす、洗面を自分で行う、トイレまで移動するなど、日常生活そのものを活動の機会として捉えることが大切です。

ただし、廃用症候群を予防したいからといって、無理に活動量を増やすわけではありません。

安静度や医師の指示、バイタルサイン、疼痛、呼吸状態、疲労などを確認し、患者さんの状態に合わせて援助します。

「自分でできた」という自信や意欲につながる

自立支援では、身体機能だけでなく患者さんの気持ちにも目を向けます。

入院すると、それまで自分で行っていたことを他者に手伝ってもらう場面が増えることがあります。

そんななかで、「自分で着替えられた」「今日はトイレまで歩けた」といった経験は、患者さんにとって自分の力を実感するきっかけになることがあります。

看護師はできなかった部分だけを見るのではなく、できた部分にも目を向けて声をかけましょう。

キャラ

「昨日よりここまでできましたね」など、できたことを具体的に伝えると、患者さん自身も変化に気づきやすくなりますよ😊

一方で、患者さんができないことを責めたり、「できるんだから自分でやってください」と無理に促したりするのは、自立支援とはいえません。

患者さんの気持ちや体調を確認しながら、「やってみよう」と思える環境を整えることも看護師の役割です。

退院後の生活を見据えた支援になる

入院中のADLを考えるときに忘れたくないのが、患者さんが退院後にどのような生活を送るのかという視点です。

病棟では看護師がいつでも援助できますが、自宅に戻れば同じ環境とは限りません。

たとえば、退院後に自分でトイレへ行く必要がある患者さんなら、病棟でも安全に移動できる方法を検討していく必要があります。必要に応じて理学療法士や作業療法士など、多職種と情報を共有することも重要です。

「今できるか」だけではなく、「退院後の生活で何が必要になるか」まで考えて援助することで、自立支援がより具体的な看護につながります。

できることをやってもらう目的は、患者さんに頑張ってもらうことではありません。
その人が持っている力を活かしながら、今後の生活につなげていくことが大切なのです🌸

「できるADL」と「しているADL」の違いを理解しよう

患者さんの自立支援を考えるとき、「この患者さんは歩ける」「着替えはできる」といった情報だけで援助量を決めてしまうことがあります。

しかし、リハビリでは歩けていても病棟では見守りが必要だったり、動作そのものはできても普段は行っていなかったりすることがあります。

そこで知っておきたいのが、「できるADL」と「しているADL」という考え方です。
患者さんの本当の生活状況を捉えるために、この2つを分けて考えてみましょう。

「できるADL」は能力としてできる動作

「できるADL」は、評価や訓練など一定の条件のもとで、患者さんが能力として行える日常生活動作を考えるときに使われます。

たとえば、リハビリ室で理学療法士がそばについていれば、歩行器を使って20m歩ける患者さんがいたとします。

この場合、「歩行器を使用して歩く」という能力を持っていることがわかります。

更衣であれば「時間をかければ上衣を自分で着られる」、食事であれば「食具を工夫すれば自分で食べられる」といった能力も確認できます。

新人看護師さんは、まず「この患者さんは何ができるのだろう?」という視点で患者さんを見ることから始めてみましょう。

「しているADL」は普段の生活で実際に行っている動作

一方、「しているADL」は、患者さんが普段の生活場面で実際に行っている日常生活動作を捉える考え方です。

先ほどの患者さんがリハビリでは歩行器で歩いていても、病棟では車椅子でトイレへ移動しているのであれば、病棟での実際の生活は異なります。

ここで大切なのは、「リハビリで歩けたのだから、病棟でも一人で歩ける」と判断しないことです。

「できること」と「普段から安全に行えていること」は、必ずしも同じではありません。

病室にはベッドや点滴台などがあり、トイレまでの距離や床の状態もリハビリ環境とは異なります。
夜間であれば、眠気や暗さなども安全性に影響します。

そのため、患者さんのADLを把握するときは、「歩ける」「食べられる」といった情報だけでなく、実際の病棟生活でどのように行っているのかまで観察することが重要です。

リハビリではできるのに病棟ではできない理由も考える

「リハビリでは歩いていたのに、病棟では歩こうとしない」という患者さんを見ると、「できるのにやってくれない」と感じることがあるかもしれません。

しかし、そこには理由が隠れている可能性があります。

  • リハビリ後で疲れている
  • 疼痛や息切れがある
  • 転倒することへの不安がある
  • 点滴やドレーンがあり動きにくい
  • 夜間や起床直後でふらつきがある
  • 病棟では安全に行える環境が整っていない

このような場合、「できるんだから歩きましょう」と促すだけでは、患者さんの状態を十分に捉えられていません。

「どうして病棟では難しいのだろう?」と考え、身体状態・心理状態・環境などを確認することが看護師のアセスメントにつながります。

キャラ

リハビリの情報はとても大切ですが、そのまま病棟での自立度に置き換えないようにしましょう。
「病棟では実際にどうしている?」まで確認するのがポイントです🩺

また、リハビリスタッフから「どの程度の介助で歩けるのか」「どんな場面でふらつくのか」「使用している補助具は何か」などを確認しておくと、病棟での援助にも活かせます。

できるADLと、実際にしているADLの差を見つけ、その理由を考えることも看護師の重要な役割です。

患者さんに「できることはやってもらう」ためには、まず看護師がその人の能力と実際の生活を正しく把握する必要があります。
そのうえで、安全に行える方法や必要な援助を考えていきましょう😊

どこまで患者さんにやってもらう?介助量の判断ポイント

「できることは患者さんにやってもらう」と理解しても、実際の看護では「どこまで見守って、どこから手伝えばいいの?」と迷いますよね。

介助量を決めるときは、「できる・できない」だけで判断しません。
患者さんの身体機能や認知機能、その日の体調、安全性、治療上の制限などを確認しながら考える必要があります。

患者さんができる部分は活かし、難しい部分や危険な部分を看護師が補うことを基本に考えてみましょう。

まず「何ができて何ができないか」を確認する

「この患者さんは更衣介助」「トイレ介助が必要」と大きなくくりで捉えるだけでは、患者さんの能力を十分に把握できません。

たとえば、更衣ひとつをとっても動作を細かく分けると、患者さんによってできる部分が異なります。

  • 衣類を準備できるか
  • 袖に腕を通せるか
  • ボタンを留められるか
  • ズボンに足を通せるか
  • 立位を保ってズボンを上げられるか

「上衣は自分で着られるけれど、立位が不安定なのでズボンを上げるところは介助が必要」という患者さんもいます。

この場合、すべてを看護師が行うのではなく、上衣は患者さん自身に行ってもらい、危険のある動作を介助する方法が考えられます。

ADLを動作ごとに細かく見ると、「できること」が見つけやすくなります。

できるだけでなく「安全にできるか」を評価する

患者さんが動作を行えるからといって、すぐに「自立」と判断するのは危険です。

たとえば、一人で立ち上がることができても、立位になった直後にふらつくのであれば見守りや介助が必要になることがあります。

自立度を考えるときは、次のようなポイントも確認しましょう。

確認するポイント 観察する内容の例
身体機能 筋力、麻痺、関節可動域、バランスなど
全身状態 バイタルサイン、呼吸状態、疲労、疼痛、めまいなど
認知・理解 指示を理解できるか、危険を認識できるかなど
治療上の制限 安静度、荷重制限、点滴、ドレーンなど
環境 ベッド周囲、履物、手すり、歩行補助具、床面など

特に移動や排泄では、転倒・転落につながる可能性があるため、安全性の評価が欠かせません。

「動作ができる」と「一人で安全にできる」は別に考えることを覚えておきましょう。

自立・見守り・一部介助・全介助で考える

介助量に迷ったときは、「自分でできるか、できないか」の二択ではなく、どの程度の援助が必要なのかを段階的に考えると整理しやすくなります。

自立・見守り・一部介助・全介助で考える

介助の目安 考え方
自立 必要な動作を安全に行える 一人で安全に食事を摂取できる
見守り 動作はできるが、安全確認や声かけなどが必要 歩行できるが、ふらつきがあるためそばで見守る
一部介助 一部は自分でできるが、特定の動作に介助が必要 上衣は着られるが、ズボンを上げる動作を介助する
全介助 動作の大部分に介助が必要 全身状態などから食事動作全体に援助が必要

ただし、この4段階はここで援助量をイメージしやすくするための整理です。実際には病院で使用しているADL評価方法やリハビリスタッフとの取り決め、看護計画などに沿って判断してください。

昨日できたから今日もできるとは限らない

新人看護師さんにぜひ覚えておいてほしいのが、患者さんのADLは固定されたものではないということです。

昨日は一人でトイレへ行けた患者さんでも、今日は発熱していたり、鎮静作用のある薬剤を使用していたり、食事摂取量が少なく体力が落ちていたりするかもしれません。

特に高齢者では、体調の変化によって活動性や注意力が変化することもあります。

そのため、「昨日は自立だったから大丈夫」と決めつけず、動作を始める前や援助時に患者さんの状態を確認しましょう。

キャラ

「昨日できていた」は大切な情報ですが、「今日も安全にできる」とは限りません。
患者さんの今の状態を見ることが大切ですよ😊

迷ったときは「できる→安全→困っている部分→必要な援助」の順で考える

実際の看護場面で「どこまで手伝おう?」と迷ったら、次の順番で考えてみてください。

看護で「できることはやってもらう」のはなぜ?

順番 考えること
①できる? 患者さん自身で行える動作はどこまでか
②安全? 一人で行っても転倒や状態悪化などの危険がないか
③どこで困る? 動作のどの部分で援助が必要になるのか
④何を手伝う? 見守り・声かけ・部分的な介助など必要な援助を考える

この順番で考えると、「全部やってあげる」「全部自分でやってもらう」という二択から抜け出しやすくなります。

自立支援とは、患者さんに任せることではなく、患者さんが安全にできる範囲を見極めて必要な援助を組み立てることです。

判断に迷った場合は、一人で決める必要はありません。
先輩看護師やリハビリスタッフなどと情報を共有し、患者さんにとって安全で適切な援助方法を検討していきましょう🩺

食事・更衣・排泄・移動で考える自立支援の具体例

ここまで「できることはやってもらう」という看護の考え方を説明してきましたが、実際の場面になると「これは手伝うべき?」「もう少し待ったほうがいい?」と迷いますよね。

自立支援のポイントは、すべての動作を患者さんに任せることではありません。
一つの動作を細かく見て、できる部分は本人に行ってもらい、難しい部分を支援することです。

ここでは、新人看護師さんが関わることの多い食事・更衣・排泄・移動・清潔ケアを例に考えてみましょう。

食事介助では食べられる部分まで介助しない

食事介助というと、「食べ物を口まで運ぶこと」をイメージしやすいですが、食事にはさまざまな動作が含まれています。

患者さん自身でスプーンを持って食べられるのであれば、最初から最後まで看護師が食べさせる必要はありません。

たとえば、食器の位置を調整する、包装を開ける、食べやすい位置に料理を配置するといった環境を整えるだけで自分で食べられる患者さんもいます。

  • 食事に適した姿勢を保てるか
  • 食具を持って口まで運べるか
  • 食器や食べ物を認識できているか
  • 咀嚼や嚥下の状態に問題がないか
  • 疲労して途中から介助が必要になっていないか

たとえば前半は自力摂取できても、疲れて後半から手が止まる患者さんもいます。その場合は、休憩を挟む、必要な部分だけ介助するなど、そのときの状態に合わせて対応します。

なお、嚥下機能に問題がある患者さんでは、単純に「自分で食べられるから自立」と判断できません。誤嚥のリスクや食事形態、姿勢、指示されている介助方法などを確認してください。

更衣では患者さんができる動作を見つける

更衣は、患者さんの残存機能を観察しやすい日常生活援助のひとつです。

たとえば片麻痺のある患者さんでも、衣類をつかむ、健側の腕を袖に通す、衣類を整えるなど、すべての動作ができないとは限りません。

「着替えができない」とまとめて判断せず、更衣動作のどこまでなら患者さん自身でできるのかを観察しましょう。

時間がかかっていると、忙しい勤務中にはつい手を出したくなることもあります。しかし、安全に行えていて本人にも意欲があるのであれば、少し待つことも援助のひとつです。

「時間がかかる=できない」ではありません。必要以上に急かさず、患者さんのペースを見守ることも大切です。

キャラ

新人のころは「早く終わらせなきゃ」と思って手伝いたくなる場面もありますよね。
でも、安全なら「待つ」ことも立派な看護ですよ😊

排泄では安全とプライバシーを守りながら自立を支える

排泄援助では、自立支援だけでなく安全性とプライバシーへの配慮がとても重要です。

たとえば、トイレまで歩ける患者さんでも、下衣を下ろすときにバランスを崩すことがあります。また、排泄後に立ち上がったときにふらつく場合もあります。

「トイレまで歩けたから排泄は自立」と判断せず、移動・方向転換・下衣の操作・便座への着座・立ち上がり・後始末まで、一連の動作を確認しましょう。

一方で、必要以上にそばにいると患者さんが羞恥心を感じることもあります。

安全が確保できる範囲で距離を取り、「終わったらナースコールで呼んでくださいね」などと伝える方法もあります。

ただし、一人になることで転倒などの危険がある場合は、プライバシーだけを優先してその場を離れてはいけません。患者さんの状態に合わせて、安全と尊厳の両方を守れる方法を考えます。

移動では転倒リスクと身体機能の両方を見る

移動場面は、「できることはやってもらう」という考え方を特に慎重に使いたい場面です。

歩行能力があっても、めまい、起立時のふらつき、筋力低下、注意力の低下などがあれば、一人での移動が危険になることがあります。

また、点滴ルートやドレーン、酸素チューブなどが移動の妨げになることもあります。

そのため、歩行を促す前には「歩けるか」だけでなく「今、一人で歩いて安全か」を確認しましょう。

場面 自立支援の考え方
一人で安全に歩ける 必要以上に介助せず、環境を整える
歩けるがふらつきがある そばで見守り、必要時すぐ支えられるようにする
立ち上がりだけ難しい 難しい動作を中心に介助し、その後の能力を確認する
状態が悪く安全に移動できない 無理に自立を促さず、安全を優先して必要な介助を行う

自立支援より安全を優先すべき場面があることも、必ず覚えておきましょう。

清潔ケアでも患者さん自身にできる部分を確認する

清拭や入浴、洗面などの清潔ケアも、看護師がすべて行うとは限りません。

たとえば、ベッド上で全身清拭を行う場合でも、患者さん自身で顔や胸、腕を拭けるのであれば、その部分は本人に行ってもらうことができます。

背中や足など手が届かない部分を看護師が介助すれば、患者さんの力を活かしながら必要な清潔を保てます。

洗面でも、物品を準備して手の届く場所に置くだけで、自分で顔を洗ったり歯磨きをしたりできる患者さんもいます。

このように、看護師がすべての動作を代わりに行うのではなく、環境を整える・声をかける・見守る・難しい部分だけ介助するという選択肢を持っておくことが大切です。

患者さんのできることは、食事・更衣・排泄・移動といった項目だけで決まるものではありません。一つひとつの動作を細かく観察すると、その人が持っている力が見えてきます。

「何をしてあげよう?」だけではなく、「この患者さんが自分でできることは何だろう?」と考えることが、できることを活かす看護につながります🌸

患者さんが「やってほしい」と言ったときの対応

身体機能をみると自分でできそうなのに、患者さんから「着替えさせて」「起こして」「食べさせて」と頼まれることもありますよね。

そんなとき、「できることはやってもらわなきゃ」と考えて、すぐに断る必要はありません。
反対に、頼まれるたびにすべて代わりに行うことが、その患者さんに適した援助とも限りません。

まず大切なのは、「できるはずなのに、なぜ今日は援助を求めているのだろう?」と考えることです。

「できるから自分でやってください」と突き放さない

患者さんのADLを把握していると、「昨日は自分でできていたから、今日もできるはず」と思ってしまうことがあります。

しかし、「できるんだから自分でやってください」と伝えるだけでは、患者さんが援助を求めている理由を見逃してしまう可能性があります。

たとえば、更衣を手伝ってほしいと言われたら、「今日は腕が上がりにくいですか?」「痛みはありませんか?」などと確認してみましょう。

そのうえで自分でできそうなら、「できるところまで一緒にやってみましょうか」「難しいところはお手伝いしますね」と伝えると、患者さんも取り組みやすくなります。

自立支援は、患者さんに援助を断ることではありません。必要な援助を見極めながら、その人が持っている力を活かすことが大切です。

痛み・疲労・不安など「できない理由」がないか確認する

患者さんが「やってほしい」と訴える背景には、身体面・心理面の変化が隠れていることがあります。

  • 痛みが強くなっている
  • 発熱や倦怠感がある
  • 息切れや呼吸苦がある
  • めまいやふらつきを感じている
  • 治療やリハビリで疲れている
  • 転倒や失敗することに不安がある

昨日まで自分でできていた患者さんが急に援助を求めるようになった場合は、単に「甘えている」と捉えないことが重要です。

特に、活動性の低下が患者さんの状態変化として現れている可能性もあります。普段との違いに気づいたら、バイタルサインや意識状態、疼痛、呼吸状態、食事摂取量など、患者さんに応じて必要な観察を行いましょう。

「いつもできていることが今日はできない」という変化そのものが、アセスメントに必要な情報になることがあります。

キャラ

「昨日できていたのに、今日はやってほしいと言っている」。
こんな変化に気づいたら、まず理由を探してみましょう🩺 患者さんからのお願いが、状態変化に気づくきっかけになることもありますよ。

患者さんの意欲を引き出す声かけを意識する

身体状態や安全性に問題がなく、自分でできる能力がある場合は、患者さんが「やってみよう」と思える声かけを意識します。

ここで避けたいのが、「自分でできるんだからやってください」といった、患者さんを突き放すように聞こえる伝え方です。

同じ自立を促す声かけでも、伝え方を少し変えるだけで印象は大きく変わります。

避けたい声かけ 取り入れたい声かけ
「自分でできるんだからやってください」 「できるところまでやってみましょう。難しいところはお手伝いしますね」
「昨日できたから今日もできますよ」 「今日は体調どうですか?できそうなところからやってみますか?」
「それくらい一人でできますよね?」 「ここはご自身でできそうですか?必要ならそばで見守りますね」

また、患者さんが実際にできたときは、「できましたね」だけでなく、「今日はご自分で袖を通せましたね」など、できた動作を具体的に伝えるのもよいでしょう。

ただし、自立を促すこと自体が目的にならないよう注意が必要です。

患者さんにはその日の体調や気持ちがあります。
「今日はつらいから手伝ってほしい」という日もあるでしょう。
そんなときまで無理に自分で行ってもらう必要はありません。

「できることはやってもらう」はルールではなく、患者さんの状態に合わせて援助を考えるための視点です。

「やってほしい」という言葉だけで判断せず、その理由を確認し、今日はどこまでできるのかを患者さんと一緒に考えていきましょう😊

自立支援で新人看護師が注意したい「過介助」と「放置」

患者さんの自立を支援しようとすると、「手伝いすぎないほうがいい」と考えるようになりますよね。

ただし、自立支援では援助しすぎる「過介助」だけでなく、必要な援助まで行わないことにも注意が必要です。

自立支援は「手伝わない看護」ではありません。患者さんの力を活かしながら、安全に行えるよう必要な部分を支える看護です。

「過介助」と「放置」

ここでは、新人看護師さんが迷いやすい「過介助」と「放置」の違いを整理していきましょう。

何でもやってしまう「過介助」に注意する

過介助とは、患者さん自身で行える能力があるにもかかわらず、必要以上に援助してしまう状態を指して使われます。

たとえば、自分でスプーンを使える患者さんの食事を最初から最後まで介助したり、自分で立ち上がれる患者さんを毎回必要以上に持ち上げたりするケースです。

新人看護師さんの場合、「患者さんを待たせたくない」「早く援助を終わらせないと次の仕事に間に合わない」と思って、つい先回りしてしまうこともあると思います。

そんなときは、援助を始める前に「これは本当に私がやる必要があるかな?」と考えてみましょう。

場面 過介助になりやすい対応 自立を支える対応例
食事 自力摂取できるのに全介助する 食器を取りやすく配置し、必要な部分を介助する
更衣 時間がかかるため全部着せる 安全なら待ち、難しい動作を手伝う
移動 歩行可能なのに毎回車椅子で移動する 状態と安全性を確認し、必要な見守りや介助で移動する

ただし、患者さんを手伝うこと自体が過介助なのではありません。疼痛や疲労、治療上の制限などによって援助が必要なときは、もちろん適切に介助します。

自立支援は患者さんを一人でやらせることではない

「できることはやってもらう」と聞くと、「手を出さずに見ていればいい」と考えてしまうかもしれません。

しかし、自分で動作できる患者さんでも、そばでの見守りや環境調整が必要なことがあります。

たとえば、歩行器を使用すれば歩けるものの、方向転換するときにバランスを崩しやすい患者さんなら、一人で歩いてもらうことが適切とは限りません。

看護師が近くで見守り、必要なときにすぐ介助できるようにすることも立派な自立支援です。

「自分でやってもらう=一人にする」ではないことを覚えておきましょう。

転倒や急変リスクがあるときは安全を優先する

自立支援よりも安全確保を優先しなければならない場面があります。

たとえば、普段はトイレまで歩ける患者さんでも、今日は発熱してふらついている、血圧低下やめまいがある、意識状態が普段と違うといった場合は、いつもと同じ方法で移動できるとは限りません。

また、手術後や治療中などでは、活動範囲や荷重などに制限が設けられている場合があります。

このような場面では、「自分でできるから」という理由だけで活動を促さず、患者さんの状態や指示を確認してください。

自立を促すことよりも、患者さんの安全を守ることを優先しなければならない場面があります。

判断に迷ったときや、いつもと状態が違うと感じたときは、一人で判断せず先輩看護師などに相談しましょう。

自立度は多職種と共有して援助方法をそろえる

患者さんの自立支援は、看護師一人だけで行うものではありません。

理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフは、歩行・移乗・更衣などを詳しく評価していることがあります。

「歩行器ならどの程度歩けるのか」「立ち上がるときはどこを支えるのか」「どの動作に介助が必要なのか」などを確認し、病棟での援助につなげましょう。

また、看護師間でも援助方法を共有することが大切です。

日勤では歩行を見守っているのに、夜勤では毎回車椅子にしているなど、スタッフによって対応が大きく異なると、患者さんも戸惑ってしまいます。

キャラ

「この患者さんは一部介助」と覚えるだけでなく、「どの動作を、どのくらい手伝うのか」まで共有できると、援助方法をそろえやすくなりますよ😊

患者さんの状態が変化して援助量を変更した場合も、看護記録や申し送りなどを通して共有していきましょう。

自立支援では、患者さんに何でも自分でやってもらうことが目標ではありません。その人が持っている力を活かしながら、安全に生活できる方法をチームで考えることが大切です。

「患者さんともっと向き合いたいのに、毎日の業務に追われて余裕がない…」と感じていませんか?

職場によって、患者さんとの関わり方や看護師に求められる働き方はさまざまです。今の働き方に悩んでいるなら、まずは自分に合った職場にはどんな選択肢があるのかを知ることから始めてみませんか?

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できることはやってもらう看護でよくある質問

「できることは患者さんにやってもらう」といっても、実際の看護では判断に迷う場面がたくさんあります。

とくに新人看護師さんは、「自立を促したいけれど転倒したらどうしよう」「忙しいときも待たないといけないの?」など、不安を感じることもありますよね。

ここでは、自立支援を実践するときによくある疑問をQ&A形式で整理します。

時間がないときは看護師が全部やってもいい?

業務が重なると、「自分でやってもらうより、看護師が介助したほうが早い」と感じることがあります。

ただし、毎回時間を理由にすべて介助していると、患者さんが自分で身体を動かす機会を減らしてしまう可能性があります。

だからといって、どんなに忙しくても患者さんが終わるまで待ち続けなければならない、という意味でもありません。

たとえば更衣なら、「上衣は患者さん自身に着てもらい、難しい下衣を介助する」など、できる部分を残しながら援助する方法を考えてみましょう。

「全部やる・全部待つ」の二択ではなく、その状況で患者さんの力を活かせる方法を考えることがポイントです。

転倒リスクがある患者さんにも自分でやってもらう?

転倒リスクがあるからといって、必ずすべての動作を全介助にするわけではありません。

一方で、「自分でできるから」と安全確認をせずに一人で行ってもらうのも適切ではありません。

たとえば、歩行は可能でもふらつきがある患者さんなら、看護師がそばで見守る、必要に応じて歩行補助具を使用する、環境を整えるなどの方法があります。

筋力やバランス、認知機能、薬剤の影響、めまい、排泄時の状況、履物、周囲の環境など、患者さんによって転倒につながる要因は異なります。

そのため、「転倒リスクあり」という情報だけで介助量を決めず、何が危険なのかを具体的に評価することが大切です。

患者さんが嫌がるときも自立を促したほうがいい?

患者さんが「今日はやりたくない」「手伝ってほしい」と話しているときに、無理に自立を促す必要はありません。

まずは、なぜ嫌がっているのかを確認しましょう。

疼痛や倦怠感、呼吸苦などの身体的な問題だけでなく、「転ぶのが怖い」「失敗するのが恥ずかしい」といった不安が隠れていることもあります。

また、患者さん自身の希望や価値観も大切です。

自立させること自体を看護のゴールにするのではなく、その人にとって必要な支援は何かを考えていきましょう。

家族が何でもやってしまう場合はどうする?

患者さん本人はできるのに、ご家族が食事や更衣などをすべて手伝っているケースもあります。

そんなときに、「手伝わないでください」と一方的に伝えるのは避けましょう。

ご家族にとっては、「本人が大変そうだから」「転んだら怖いから」といった思いから援助している可能性があります。

まずその気持ちを確認したうえで、患者さんが現在どこまでできるのか、どこに援助が必要なのかを共有します。

たとえば、「ここまではご自身でできているので、まず見守ってみましょう。
立ち上がるところだけ一緒に支えてください」など、具体的な関わり方を伝えるとご家族も実践しやすくなります。

退院後に家族の援助が必要になる場合は、看護師だけでなくリハビリスタッフなどとも連携し、安全な介助方法を共有していくことが大切です。

自立度がわからないときは誰に確認すればいい?

患者さんの自立度がわからないときは、自己判断で援助量を決めず、まず看護記録や看護計画、病棟内で共有されている情報を確認しましょう。

そのうえで不明な点があれば、先輩看護師や担当看護師に確認します。

歩行や移乗、更衣などについては、理学療法士や作業療法士などが詳しく評価していることもあります。

「歩けますか?」だけではなく、

  • どの補助具を使うのか
  • 見守りは必要なのか
  • どの動作で介助が必要なのか
  • どんなときにふらつきやすいのか

といった具体的な内容まで確認すると、実際の看護援助につなげやすくなります。

キャラ

新人看護師さんが介助量に迷うのは珍しいことではありません😊
わからないまま自己判断するより、「どこまで一人で大丈夫ですか?」と確認することが患者さんの安全につながりますよ。

患者さんの自立度は一人で判断するのではなく、実際の様子を観察しながらチームで共有することが大切です。

そして、患者さんの状態が変われば必要な介助量も変わります。「この人は見守り」と固定して覚えるのではなく、その日の状態を確認しながら安全な援助につなげていきましょう🌸

✅まとめ☆この記事で学べる「できることはやってもらう看護」

看護で「できることはやってもらう」と聞くと、「患者さんに自分でやってもらえばいい」と捉えてしまいがちです。

しかし、本当に大切なのは患者さんが持っている力を見つけ、安全性を確認したうえで、必要な部分だけを支援することです。

最後に、この記事で学んだポイントを振り返ってみましょう😊

この記事のまとめポイント

この記事での再重要部位👉

  • できることをやってもらうのは、患者さんのADLや残存機能を活かす自立支援のひとつ
  • 「できる」だけでなく「安全にできるか」を確認し、見守り・一部介助・全介助など必要な援助量を考える
  • 自立支援は放置ではなく、患者さんが難しい部分や危険な部分を看護師が支えることが大切

記事のまとめ

患者さんのためを思うほど、「私がやったほうが楽なのでは?」と手を出したくなる場面もありますよね。

そんなときは、すぐに介助する前に「この患者さんが自分でできる部分はどこだろう?」と考えてみてください。

食事なら食器を使いやすい位置に置く、更衣なら難しい部分だけを手伝う、歩行ならそばで見守るなど、看護師の援助には「全部やってあげる」以外にもさまざまな方法があります。

一方で、患者さんの自立を優先するあまり、安全を置き去りにしてはいけません。

昨日までできていた動作でも、疼痛や発熱、疲労、呼吸状態、意識状態などによって今日は難しくなることがあります。

「できることはやってもらう」とは、できる・できないを決めつけることではなく、その日の患者さんを観察して必要な援助を考えることです。

迷ったときは一人で抱えず、先輩看護師やリハビリスタッフなどにも相談してみてください。

患者さんの「できないこと」だけではなく、「できること」を見つけられるようになると、日常生活援助を見る視点も少しずつ変わってきますよ🌸

引用

公益社団法人日本看護科学学会「セルフケア」

公益社団法人日本看護科学学会「療養上の世話」

上田敏ほか「整容・入浴動作」総合リハビリテーション 19巻10号、医学書院

参考

公益社団法人日本看護科学学会「JANSpedia 看護学を構成する重要な用語集」

公益社団法人日本看護科学学会「生活」
公益社団法人日本看護科学学会「清潔」

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