
アメリカのサイトで
看護倫理ってなんの役になっているの?私は大学や大学院で多くの時間を看護倫理について割いてきた。
だけど、実際に現在、仕事で役に立っていない。 みんなそもそも看護理論を考えながら仕事しているの? もっと実践的なことを学校で学びたかった。 |
というスレッドを見つけました。
それには多くの人が協賛しており、たしかにわたしも看護倫理なんてナイチンゲールが清潔にしましょうってやつと病気だけではなくて精神的にも支えになりましょうと誰かが言っていたくらいしか覚えていないのです。
しかし、看護理論というのは普段自分が意識していないだけで大いに看護師として役に立っているものなのです。
今一度看護理論を学びなおしてみませんか?
看護理論って何?
ただでさえつまらない(と、少なくとも私は思っている)看護理論なので、簡単にかつ、カジュアルな感じで説明をしていきたいと思います。
看護理論の定義
看護理論とは、看護に関する見方や方向性を示す系統的な論述である。
また、その定義は多様である。看護理論は、患者が望ましい安寧や健康を回復できるよう援助するための専門職としての看護の実践基盤を提供する。
さらに、看護理論は、看護職者が看護実践・教育実践・研究の質を上げ、専門職として十分な社会的承認を得るために必要不可欠である。
日本看護科学学会. 看護学学術用語検討委員会. n.d. JANSpedia看護理論 nursing theory より引用
(閲覧日25/01/09)
超簡単に言うと、看護理論は、看護師が患者さんを助けるための「地図」や「道しるべ」のようなもの。
これがあることで、看護師はどのように患者さんをケアすればよいかを考えやすくなり、より良いお世話ができるようになります。
看護理論の目的と重要性
超簡単にかみ砕いていうと「看護理論」とは、看護師が「どうやって患者さんを助けるか」を考えるための「レシピ」のようなものです。
患者さんはどのような状態なのか、患者さんに合ったケアはどんなことなのか。
そして経験をつむことで、看護師は「なぜこの方法でケアをするのか」を説明できるようになります。
そして理論を用いることで、看護師は科学的な根拠に基づいたケアを提供できます。
これにより、自分の仕事に自信を持ち、患者さんにも安心感を与えることができ、患者さんとの信頼関係の構築にも役に立つのです。
初めからレシピが用意されていたら何にもないところから学習をしていくより「看護師」としての人間性を育てる教科書があった方が勉強しやすくないですか?
入学前は「患者さんに寄り添える看護師になりたいです!」という看護観が、卒業時には、より具体的に変化したり、またまた臨床経験を積んでいく中で変化したりしていませんか?
それの基盤作りですね。
こうしてみると、普段から「看護理論」というものを意識していなくても自分の働いているときの言動と重なることがありませんか?
看護師を目指した理由に「患者さんを助けたい」という思いが強かった人が多いと思います。(ちなみにわたしは友達と同じ学校に進学したいという理由だけで看護師になりました。)
この「助けたい」を叶える勉強をするための方法を勉強するのが看護理論なのです。
勉強するための勉強ですね!
看護理論の基礎知識
ここで看護理論を意識していなくても、こうやって見ると「やっぱりわたしは看護師なんだなぁ」なんて思う人もいるでしょう。
看護師さんに感謝します!と言ってくれる患者さんや家族はたくさんいますが「わたしにはとてもじゃないけど務まりません」なんて言われた経験もあるのではないでしょうか?
傍から見たら、看護師という仕事は3Kと言われるハードな仕事で、本当に心が優しくないとできないと思っている方もいらっしゃると思います。
現実「白衣の天使」とも言われ、若いころは看護師というブランドだけでモテましたからね(ただし、医療従事者以外から)
しかし、実際には看護師には気が強い(癖強い)人が多く、とてもじゃないけど「白衣の天使」なんかではありません。
どんなに看護師や他のスタッフには優しくない人でも、患者さんの前だけでは本当に優しいほほえみで接している(悪魔のような)看護師さんもいますよね。
人間性も大切ですが、看護理論という基盤がしっかりしているからなのではないかと思っています。
代表的な看護理論の概要
看護理論を大きく分類すると以下の3つに分けることができます。
- 広範囲理論(Grand Nursing Theories):
抽象的で広範囲な概念を扱い、看護の全体像を示します。
- 中範囲理論(Middle-Range Nursing Theories):
特定の現象や実践に焦点を当て、実証可能な理論です。
- 実践理論(Practice-Level Nursing Theories):
特定の患者集団や状況に直接適用される具体的な理論です。
看護理論の大まかな歴史
「看護理論」として学習されるようになったのはみなさんご存じの通りナイチンゲールの環境理論がはじめとされています。
それまでは看護師は世話焼きのようなもので、職業としてはなく、主に修道院のシスターたちがお世話をし、神頼みをしていました。
そこからナイチンゲールの理論が出てきたわけですが、これは不衛生な環境では患者さんたちの清潔の確保はもちろんのこと、精神的な安定も確保できないという考えから、環境作りから始めたことがきっかけです。
この経験談がのちに「看護覚え書」として残されることになりました。
そこから看護理念というものが発生し、看護が「作業」から「科学的根拠に基づく専門職」へと進化することとなったのです。
ちなみに現代の看護学生もナイチンゲール誓詞を覚えるのでしょうか??
看護理論の比較
初めに触れた「アメリカのスレッド」の話ですが、これには続きがあります。
看護理論なんて全く意味のないものと私も初めはとらえていました。
しかし、一人の理論者にすべてを従おうとするから、自分には必要のないものなのだと思い込んでいるという結論が出たのです。
看護観がそれぞれ違うので学校や職場から「この人の看護倫理に沿ってアセスメントしなさい!」なんて言われても理解できないところがあったりするのは当たり前なことなのです。
看護倫理は「レシピ」と例えましたが、看護倫理者の唱える言葉の一つ一つは材料だったり、調味料なのかもしれませんね。
では、それぞれの倫理者たちの言い分を見てみましょう!
理論の適用範囲の違い
理論の適用範囲の違いは、看護師がどのような場面で理論を活用するかに影響します。
下記に簡単にまとめました。
看護理論はその抽象度や適用範囲に応じて使い分けられ、看護の質を向上させるために役立っています。
理論の実践的な利点
利点を活用することで、理論と実践を効果的に結びつけ、より良い成果を生み出すことが期待されています。
看護理論は今後も進化する!?
偉大な看護理論を唱える人はいなくても、今後も医療の環境が変わってくる限り看護理論は変化をし続けそうではないですか?
広範囲理論よりも今後はもっと個人に、そして家族をも対象にした看護が求められる時代になります。
看護師も専門看護師という制度ができ、認定看護師とは違い、患者さん、家族、地域をも考慮した看護が必要とされています。
在宅看護がこれから増えると考えられている中で看護師に求められるスキルはどんどんと増加し、「特定認定看護師」の育成に急いでいるところです。
「特定認定看護師」とは、医師の到着を待たずに医療行為を行える(限られた範囲内)もので、これから高齢社会のピークを迎えるまでに多くの看護師がこの資格を取ることに挑戦すると思われます。
また在宅看護がさらに普及する頃には、特定認定看護師が行える医療行為はどんどんと増えていくものと思われます。
今までの看護理論の範囲内では収まらない技術が看護師にも求められるようになったら…。
看護理論の基盤は変わらないでしょうが、求められることが増えるので理論も変わってくるのではないでしょうか?
あなたはどんな看護師になりたいですか?
今一度看護理論を見直して、自分の看護観を考えてみませんか?