
看護師の退職金事情、気になりませんか?
「退職金がなんだか少ない気がする…」
「次は退職金をしっかりもらえるところに転職したい」
看護師として懸命に働いた後に受け取れる退職金。しかし、自分が思っていた金額とギャップがあることも少なくありません。実際に、病院の規模によって、もしくは勤続年数によって退職金の額が異なることがあります。
働く前に退職金についてしっかり把握しておくことで、理想と現実のギャップに苦しむことがなくなります。転職する前に退職金事情をきちんと確認しましょう。
この記事では、以下のような内容を紹介します:
看護師の退職金の仕組みと種類
看護師の退職金の相場
勤務形態・職場別の退職金
退職金が出ない・減給されるケース
退職金を多くもらえる職場を選ぶコツ
プロの現場を知る看護師目線で、**「看護師の退職金にまつわるアレコレ」**を解説しています。ぜひブックマークして、次の転職に活かしてくださいね。
【看護師の退職金】支給の仕組みと種類を知ろう
看護師として働く中で、「退職金はどれくらいもらえるのか」「退職金の制度はどうなっているのか」「看護師の退職金の相場はどのくらいなのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。特に転職や定年を見据えるタイミングでは、退職金の有無や支給額は将来の生活設計に大きく関わる大切な要素の1つです。
実は、看護師の退職金制度は一律ではなく、勤務先の種類や規模、雇用形態などによって仕組みや支給条件が大きく異なります。また、看護師の退職金の相場を調べていても、制度の仕組みを理解していないと、金額だけに目がいってしまい誤解を招くこともあります。
この章では、退職金の計算方法や支給タイミングといった基本的な仕組みのほか、どのような制度の種類があるのかについて分かりやすく解説します。制度の違いを理解することで、自分の勤務先の退職金がどのように決まるのか、そしてどの程度もらえる可能性があるのかを具体的にイメージしやすくなるはず。
退職金の基本構造(支給タイミングや前払い・年金型など)
看護師の退職金制度で最も一般的なのは、退職時に一括で支給される「一時金型」ですが、近年では「前払い型」や「年金型」といった別の形式を取り入れている医療法人も見られます。
看護師の退職金における主な支給タイプ:
- 一時金型
最も多くの医療機関で採用されている形式。退職時にまとめて支給され、支給額は勤続年数や退職理由に応じて変動します。 - 前払い型
退職金相当額を毎月の給与に加算して支給する方式。退職時にまとまった支給はありません。早期離職者の多い施設や若年層の多い職場で導入されるケースがあります。 - 年金型
退職後に定期的に年金形式で支払われる制度。大学病院や社会福祉法人など、福利厚生の整った大規模施設で見られます。
また、退職金の有無や支給条件は法律上の義務ではなく、労働契約に基づいて決まるため、勤務先の就業規則や労働条件通知書に明記されているかどうかを必ず確認しましょう(※1)。
※1:厚生労働省「労働契約締結時の労働条件の明示」
退職金制度は職場によって変わる?
看護師の退職金制度は、すべての職場で共通しているわけではありません。実際には、退職金の有無や金額、支給方法は、勤務先ごとの就業規則に基づいて大きく異なります。
たとえば、同じ看護師でも以下のように制度が変わる場合があります。
- 公立病院:地方公務員の退職手当制度に準じており、一定の勤続年数に達すると高額の退職金が支給されることが多いとされる
- 大学病院や大規模医療法人:年金型や確定拠出型の制度を取り入れ、福利厚生が手厚い傾向がある
- 個人病院や中小規模のクリニック:退職金制度自体がなかったり、支給額が数万円〜数十万円程度にとどまる場合もある
そのほか、訪問看護ステーションや介護施設などでも支給条件や制度設計は様々であり、看護師という職種であっても一律に退職金が出るとは限りません。
自己都合退職と定年退職の違い
退職金は、「どのような理由で退職するか」によって支給額が大きく変わることがあります。その中でも、自己都合退職と定年退職の違いは多くの医療機関で明確に区別されており、支給額に差が出ることが一般的です。
自己都合退職とは、自らの判断で退職するケースを指します。たとえば転職、引っ越し、家庭の事情などが理由に当たります。一方、定年退職はあらかじめ定められた年齢(例:60歳や65歳)に達して職場を退くケースで、本人の意思とは関係なく発生するも。
一般的に、定年退職の方が支給率が高く設定されており、同じ勤続年数でも受け取れる退職金が多くなる傾向があります。一方、自己都合退職は「途中でやめる」という扱いになるため、満額支給ではなく、勤続年数に応じた調整率が適用されるケースが多いです。
ただし、この扱いは病院や法人ごとの就業規則によって異なるため、「自己都合だとどのくらい減るのか」「定年退職扱いになるのは何歳か」といった点は、あらかじめ確認しておく必要があります。
看護師の退職金の相場を確認しよう
退職金は、看護師として長く働いたことへのひとつの節目となるお金になります。しかし、「実際にいくらもらえるのか」は、意外と知られていないのが現状です。病院の規模や働き方、勤続年数などによって支給額が大きく変わるため、一律の目安があるわけではありません。
そのため、相場を知ろうとしても「自分に当てはまる情報が見つからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、勤続年数や勤務先の種類ごとに、看護師の退職金相場を具体的に紹介します。転職や定年を考える上での参考にしてみてください。
勤続年数別の平均支給額(3年・5年・10年・20年・30年)
看護師の退職金は、制度のある病院や法人に勤務した場合、勤続年数に応じて増額される傾向があります。以下の表は、支給される金額のおおよその目安です。
勤続年数 | 退職金の目安 |
3年 | 約20〜30万円程度 |
5年 | 約30〜50万円程度 |
10年 | 約250〜300万円程度 |
20年 | 約400〜600万円程度 |
30年 | 約700〜1,00万円程度 |
これらは、公的病院や大規模な医療法人で支給される傾向がある金額の一例です。実際の支給条件や金額は、就業規則や労働条件通知書で確認しましょう。
病院の規模別の退職金相場(国立病院・公立病院・クリニックなど)
看護師の退職金は、病院の規模や運営母体によっても大きく異なります。代表的な医療機関ごとの定年退職時に見られるおおよその支給傾向をまとめたのでチェックしてみましょう。
病院の種類 | 退職金の目安(定年退職時) | 特徴・補足 |
国立病院 | 約1,800万円 | 国立病院機構の制度に基づき、支給水準は高め。6カ月以上の勤務で支給対象になる例もある。 |
公立病院 | 約1,400万円〜1,900万円程度 | 地方公務員扱いとなり、「国家公務員退職手当法」に準じた支給が多い。政令市ではやや高め。 |
私立病院 | 約800万円〜2,000万円の範囲で幅がある | 病院の経営方針によって大きく異なる。制度が整っていない場合もある。 |
クリニック | なし〜100万円程度が一般的 | 小規模経営のため、退職金制度がそもそも設けられていないケースが多い。支給がある場合もごく少額。 |
クリニック勤務の看護師は、退職金制度がない前提で働いている人も少なくありません。一方、給与に上乗せする「退職金前払い型(月給に退職金相当額を上乗せする方式)」を採用している場合や、長期勤務者に対して独自の支給を設けている医療法人も存在します。
退職金の計算方法もチェック!
看護師の退職金は、勤務先によって計算方法が異なります。制度の内容を把握するには、単に「金額が出るかどうか」だけでなく、どのように金額が決まるのかを知っておきましょう。
退職金の算出には、次のような計算方式が一般的に用いられています。
【代表的な計算式の例】
退職金 = 基本給 × 支給係数 × 勤続年数
例:月給25万円・勤続年数10年・支給係数0.8の場合
25万円 × 0.8 × 10年 = 200万円
ただし、「支給係数」は病院ごとに異なり、退職理由(定年退職・自己都合など)によっても変動することがあります。また、役職加算や評価加算などが加わる制度を導入しているところもあります。
さらに、「退職金前払い型」や「ポイント制・確定拠出型」の違いによって、同じ勤続年数でも退職金額には大きな差が出ることがあります。制度の詳細は、就業規則や退職手当規程などに明記されていることが多いため、事前に確認しておくと安心です。
勤務形態・職場別で退職金はどう変わる?
退職金の金額は、勤続年数や病院の規模だけでなく、勤務形態や職場の種類によっても変わります。正職員かパートタイムか、公立病院か民間病院かといった条件により、支給額や制度内容に差が出るため、状況に応じた確認が必要です。ここでは、勤務形態や職場別に退職金の違いを解説します。
常勤・非常勤・パート看護師のケース
看護師の「常勤」と「非常勤・パート」の間では、制度の有無そのものが異なるケースもあります。
常勤看護師の場合、正規雇用として就業規則に基づいた退職金制度が設けられていることが多く、勤続年数に応じた支給が受けられる傾向にあります。一方、非常勤・パート看護師については、退職金制度が設けられていない、あるいは支給条件が厳しい場合も少なくありません。
たとえば、厚生労働省の調査では、パートタイム労働者に退職金制度がある事業所の割合は12.6%にとどまり、常用労働者(フルタイム雇用)に比べて著しく低い水準であることが示されています(※2)。このように、非常勤やパートの勤務形態では、制度の対象外となるリスクもあるため、事前の確認が重要です。
また、パート勤務であっても、長期間にわたり継続的に働いていた場合や、週の労働時間が常勤に近い場合には、非常勤職員向けの退職金制度が設けられていることもあります。近年は、非正規雇用者の待遇改善が進められており、退職金支給の有無は職場ごとの差が広がってきています。
※2:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査」
訪問看護師・クリニック勤務のケース
訪問看護ステーションやクリニックで働く看護師の場合も、退職金の支給状況は勤務先によって大きく異なります。特に、病院勤務と比べて規模が小さい傾向にあることから、退職金制度が整っていない職場も少なくありません。
訪問看護師は、医療法人や株式会社、NPOなどさまざまな運営母体の事業所で働くことになります。制度がしっかり整備されている法人もありますが、小規模な事業所では退職金制度自体が設けられていないケースもあります。制度があっても、支給対象が常勤職員に限られていたり、長期間勤務しなければ対象とならないなど、条件が設けられていることも見られます。
一方、クリニック勤務の看護師も、退職金制度の有無は運営主体によって異なります。大きな医療法人が運営するクリニックであれば、病院と同様の制度が整っている場合がありますが、個人開業のクリニックでは、制度がなかったり、実質的に支給が行われていないというケースも。
このように、訪問看護やクリニックといった職場では、退職金の有無や条件が施設ごとに異なるため、就業前に制度の有無や具体的な支給基準を確認しておきましょう。
公務員看護師のケース
公務員として働く看護師は、退職金制度が比較的安定している職場に分類されます。地方自治体や国立病院機構など、公的な機関での勤務が多く、制度自体が法律や条例に基づいて整備されているのが特徴です。
地方公務員として働く看護師の場合、退職金は地方公務員全体の規定に準じて支給されます。勤続年数や最終給与額、退職理由などによって支給額が決まり、定年退職時にはまとまった金額が受け取れる傾向が見られます。一般企業や民間の医療機関と比べると、退職金制度が明文化されており、支給条件が比較的はっきりしている点も安心材料の一つです。
また、国立病院機構などの法人に所属する看護師についても、独自の制度を設けつつ、公的機関に準じた退職金の仕組みが採用されていることがあります。長く勤めることで退職金額が着実に積み上がるため、将来を見据えた働き方を考えるうえでも選択肢に入れやすい勤務先といえるでしょう。
退職金が出ない・減額されるケースもある?
退職金は、長く働いたことへの評価として支給されるものというイメージがありますが、必ずしも誰にでも満額支給されるとは限りません。実際には、勤務先の制度や就業規則、退職のタイミングや理由などによって、退職金が出なかったり、減額されたりするケースもあります。
たとえば、「自己都合で退職した場合に支給額が少なくなる」「勤続年数が一定に達していないと支給対象にならない」といった条件が設けられている職場も見られます。制度の内容は職場ごとに異なるため、自分のケースがどう扱われるのかを事前に理解しておくことが大切です。
この章では、看護師として働く上で注意したい「退職金が出ない」「思ったより少ない」といった事例について、その背景やよくあるパターンを紹介していきます。
退職金の制度がない病院はどんな病院?
退職金制度がない傾向にあるのは、主に個人経営の小規模病院や診療所です。こうした施設では、人員規模や経営資源に余裕がなく、福利厚生も最小限にとどめられていることが多いため、退職金制度そのものが導入されていない場合があります。また、制度があっても実質的な支給が行われない例も見られます。
さらに、非常勤やパート勤務のスタッフが多い病院、または離職率が高く長期勤続者が少ない職場では、制度を整備していないこともあります。これは、退職金の支給対象となる人材が少なく、制度の維持コストが見合わないと判断されていることが理由の一つです。
一方で、明文化された制度がなくても、長年勤務したスタッフに対しては一時金を支給するなど、院長や経営者の裁量で対応するケースもあります。
自己都合退職・早期退職で減額されるケースも
退職金は、同じ勤続年数でも退職の理由によって支給額が変わることがあります。中でも気をつけたいのが、自己都合による退職や早期退職の場合です。
多くの医療機関では、就業規則や退職金規程の中で、定年退職と自己都合退職で支給率や支給額に差を設けているケースがあります。たとえば、定年退職の場合に比べて、自己都合退職では退職金の支給率が抑えられている、あるいは一律の金額になるといった運用がされていることも。
また、早期退職については、勤続年数が短いと退職金が支給されない、または最低限の額にとどまる場合があります。一定年数以上の勤務を支給条件として定めている職場もあり、思わぬ減額や不支給となる可能性も否定できません。
こうした扱いは職場ごとに異なるため、退職を検討する際には、就業規則や退職金に関する規定をよく確認しておきましょう。
確認すべき! 就業規則と労働契約書のポイント
退職金の支給有無や条件は、勤務先ごとに大きく異なるため、あらかじめ制度の内容を把握しておくことが重要です。特に確認しておきたいのが「就業規則」と「労働契約書」です。
就業規則には、退職金制度の有無や支給対象、計算方法などが記載されていることがあります。たとえば「勤続〇年以上が対象」「自己都合退職は減額」といった具体的な条件が書かれていることもあり、制度が適用されるかどうかを見極める手がかりになります。
一方、労働契約書には、個別の雇用条件として「退職金あり」「制度なし」といった記述があるケースも。特にパートや非常勤看護師の場合は、契約書に制度の有無が明示されていることもあるため、細かく確認しておくと安心です。
いずれも、制度の有無だけでなく「どういった条件で支給されるか」「減額されるケースはあるか」といった部分にも目を向けることが大切です。不明点がある場合は、事前に事担当者に質問しておくことで、後のトラブルを避けやすくなります。
退職金を多くもらえる職場を選びたいときは…
退職金は、現役時代に受け取る給与とは違い、将来に向けた大切な蓄えになります。だからこそ、できるだけ制度が整った職場を選び、納得のいく形で退職金を受け取りたいと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、退職金制度の有無や内容は職場によって大きく異なり、「制度がある」と書かれていても、支給条件や対象者に制限がある場合もあります。また、退職理由や勤続年数によって支給額が変動するケースもあるので注意しましょう。
ここでは、退職金を少しでも多く受け取るために、事前に確認しておきたいポイントや、制度が整っている職場の見極め方について解説します。
退職金制度がちゃんと整っている職場を選ぶ
退職金を確実に受け取りたいと考えるなら、まずは退職金制度がきちんと整備されている職場かどうかを確認しましょう。求人票や採用サイトに「退職金制度あり」と記載されている場合でも、支給条件や制度の内容は職場によって異なるため、表記だけで安心せず、詳細を確認することが大切です。
就業規則や労働契約書に退職金に関する項目が明記されているか、勤続何年以上から支給対象となるか、自己都合退職でも支給されるかなど、具体的な条件をチェックしておくと安心です。特に、制度の有無が曖昧な場合や、説明が不十分な場合は、入職前に人事担当者へ直接確認しておくのがベストです。
また、制度があるだけでなく、長く働くことで退職金がしっかり上乗せされる仕組みになっているかどうかも重要な鍵になります。福利厚生の一環として制度をきちんと整備している医療機関は、職場としての安定性や信頼性が高い傾向にあります。
転職前にチェックすべき3つのポイント
退職金制度が整った職場を選ぶために、以下のようなポイントを事前に確認することで、退職後の後悔を防ぐ助けになります。
- 退職金制度の有無と支給条件
求人情報に「退職金あり」と書かれていても、実際には勤続年数に条件があったり、正職員のみが対象となっているケースがあります。就業規則や労働契約書に具体的な支給基準が記載されているかを確認しましょう。 - 自己都合退職時の扱い
退職理由によって支給額が変わる場合もあるため、「自己都合でも支給されるか」「減額条件があるか」などを事前に把握しておくと安心です。不明な点は面接時や入職前に人事担当者へ質問しても問題ありません。 - 過去に退職金を受け取った事例があるか
可能であれば、実際にその職場で長く勤務して退職した人の事例を聞けると、制度の運用実態が見えてきます。口コミや転職エージェントの情報を参考にするのも一つの方法です。
このような視点を持って転職活動を進めることで、退職金に関して納得がいきやすくなるでしょう。
まとめ|退職金の仕組みと相場を理解して、次の職場に活かそう
看護師の退職金は、勤続年数や職場の規模だけでなく、勤務形態や退職理由、そして就業規則の内容によっても大きく変わってきます。制度が整っている職場もあれば、そもそも退職金の仕組みがないというケースもあるため、自分の状況に合った情報をしっかり確認しましょう。
「退職金はどこでももらえるもの」と思い込まず、制度の有無や支給条件をきちんと理解したうえで、将来を見据えた職場選びをすることが安心したキャリア形成につながります。
転職を考えるときは、求人情報だけでなく、就業規則や労働契約書の確認、必要に応じた質問や情報収集を通じて、退職金に関する不安をできるだけ減らしておくと安心です。納得のいく働き方を選ぶためにも、退職金の知識も身に付けておきましょう。