
社会的ニーズに高い看護師は全国に120万人以上存在し、その多くは病院に勤務しています。
しかし、看護師の資格を活かして働ける場所は病院以外にもたくさんあり、業務内容も特徴も職場ごとに異なります。
看護師は病院以外にもニーズのある職業なので、働き方の選択肢はたくさんあります。
病院でも、それ以外でも自分で希望する職場を探し、ライフスタイルやキャリア設計に合った経験を積むことが可能です。
今回この記事では、
・看護師に人気の就職先
・自分に向いている就職先を探す方法
などを解説します。
ブックマークをしていつでも見返せるようにしておきましょう!
看護師の就職先人気TOP3は?
病院をはじめ、クリニックや訪問看護など看護師の就職先はさまざまです。
多くの看護師は病院での勤務をしていますが、他の就職先や人気の就職先も知りたいですよね。
まずは、人気の就職先を見ていきましょう。
1位:病院(69.0%)
看護師の就職先として最も多いのは病院です。
2020年時点では約70%が病院に勤務する看護師だと厚生労働省の調査で分かっています。
病院と一口に言ってもさまざまな種類あり、厚生労働省が運営し、看護師は国家公務員や準公務員として勤務する国立病院、運営は都道府県や市町村で、看護師の勤務形態が地方公務員となる公立病院をはじめ、医学部などの付属である大学病院や一般病院まで幅広いです。
診療科は、内科や外科を基本に、救急救命科、ICU、精神科、産婦人科、小児科などがあります。
新卒看護師の多くがまず就職するのが、病院です。
将来やキャリアを考えたときに一度は臨床経験を積まないとその先の働き方に影響がでるので、病院に勤める方が多いのです。
転職したとしても病院勤務を選ぶ看護師も多いようです。
病院勤務のメリットとしては、人数が多いので、患者さんの急変時や困ったときに助け合える、体調不良などで休みを取りたいときも取得しやすい環境が整っているなどが挙げられます。
病院は看護師の主戦場のため募集の母数も多いため、病院勤務の看護師として病院を変えながらキャリアを形成できるのも人気の理由です。
2位:診療所(13.2%)
入院している患者さんが19人以下であったり、入院するベッドがない病院を診療所と区分けします。
俗にいう町の病院、クリニックです。
仕事内容は、問診や血圧測定、採血、注射、点滴などの看護の基本から備品整理や清掃、受付などの業務まで幅広く行います。
夜勤がなく、クリニックの休日も曜日が決まっているところが多く、プライベートとの両立がしやすいところが大きなメリットです。
ただ、給料は病院勤務よりも低くなってしまう可能性や研修などの教育体制が病院ほどは整っていない場合もあるので要注意です。
診療所やクリニックで働く場合は、新卒で働くのは稀で、多くは一定年数以上の臨床経験があり、点滴・注射・採血などの基礎スキルが勤務の必須条件としていることが大部分を占めます。
3位:介護保険施設等(7.9%)
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などの介護保険施設で働く看護師も上位2津に比べると少数になりますがいます。
主に高齢の利用者の健康管理や生活支援を行っています。
介護士と連携をとりながら、入居者の生活全般をサポートしていき、介護士にはできない医療行為を行う立場で入居者の健康管理が業務です。
医師が常駐しない施設で入居者の容体が急変したときは、看護師が応急処置を担います。
救急や医師への引き継ぎの役割も担います。
こうして、医療的な判断をしなければならないケースも多く、その分責任は大きくなります。
施設の種類によって仕事内容は異なります。
要介護度3以上の入居基準が定められた特別養護老人ホームは、食事や入浴などの身体介護や日常生活支などが中心です。
高い医療的ケアが必要な場面は少なめで、夜勤もない施設のため比較的働きやすい施設です。
有料老人ホームは介護付きと住居型の2種類があり、介護付きの場合は、さらに介護専用型と混合型に分けられます。
介護専用型は要介護者のみが入居し、混合型は自立・要支援と要介護のどちらもが入居します。
こちらも日常生活の補助が中心のため、いずれにせよ医療的処置の場面は少なめです。
給料に関しては、施設の種類や夜勤の有無をはじめ、勤務形態や雇用形態などによって変わります。
夜勤のある施設なら病院勤務と差のない給料になることも。
病院以外の就職先
病院以外にも看護師が活躍する職場はあります。
看護師の経験が直結するもの、フィールドが異なり経験は活きないけれど医療の知識が重要になる職業などさまざまです。
一般企業の産業看護師
産業看護師または企業看護師と呼ばれる職業は、病院ではなく企業で働く看護師を指します。
企業内の診療所や医務室などに勤務し、社員やスタッフの健康管理をメインとした業務を行います。
医務室や健康管理部門が設置されている規模の大きな企業の場合、健康診断の実施とフィードバックまで担当し、他に保健指導や健康相談、急病やケガの処置も行います。
また、CRCと呼ばれる治験の受託企業で業務サポートをする治験コーディネーターや臨床開発モニター(CRA)として治験のモニタリングをする、医療機器メーカーなどで営業をサポートすることもできます。
医療知識を活かした問い合わせ対応、コールセンターなどで勤務することも可能です。
企業での看護師の活躍の場はたくさんあるのです。
さらに、企業の医務室や健康管理室は、夜勤や残業もほとんどなく、企業ごとに異なりますが、9〜17時での勤務が多くなります。
そのため、病棟勤務の平均年収よりは下がってしまいますが、450〜500万程度ほどがもらえます。
一般OLと同じく、会社の規模が大きければ大きいほど年収が上がります。
その分、仕事量が増えたり、パフォーマンスも高い水準で求められることもあるので企業選びは慎重に。
保育園や幼稚園
看護師として子どもと関わる仕事に就きたいと考える方もいるのではないでしょうか。
他にも、小児病棟での経験を活かしたい、子どもの健康や成長をサポートできる仕事がしたい、産休後の復帰なので無理なく育児と仕事の両立がしたいといったニーズもあるかもしれません。
実は2023年4月に当面の経過措置ではありますが、各保育園での看護師や准看護師、保健師資格のある方を保育士とみなすこと(1人に限り)が発表されています。
保育士不足が続いているので、看護師資格の保有者を保育士としてカウントできることから、保育園での看護師需要が高まりつつあります。
保育園や幼稚園で働く看護師は、乳幼児の検温、ケガへの応急措置、アレルギーへのケアや投薬、身体測定、健康診断、歯科検診の補助などを行います。
医療行為はほとんど行わず、衛生・健康管理が大きな割合を占めます。
他にも、子どもの健康状態などについて保護者とのコミュニケーションや相談を受けることも大切な業務です。
夜勤や残業が他の職場に比べて少なく自分の時間も取りやすいのが特徴で、子どもが好き、得意な方にはピッタリではないでしょうか。
治験支援を行う機関(CRC)
治験コーディネーターと呼ばれるCRC(Clinical Research Coordinator)は、治験がスムーズに進むようサポートをする仕事です。
医師、被験者、製薬会社の間に立ち、橋渡しの役割を担います。
デスクワークがメインで、治験の実施前から実施後までの一連の業務、調整業務を行います。
被験者に対しての服薬指導、治験に関する相談を受けることが業務に当たりますが、直接的な処置や医療行為を行うことはありません。
同時に複数の治験を掛け持ちすることが多く、担当する病院、クリニックを行き来するケースがほとんどです。
治験の実施計画書に沿って、対象となる被験者を募集するところからスタートします。
募集した被験者候補から被験者を選定、診察同行や内容説明、検査キットの準備を経て、スケジュール作成・管理、医師や関係者に対して経過報告などを行い、最終的には記録したデータをまとめ報告書を作成します。
年収は430万〜480万円ほどと日勤のみでありながら病棟看護師とほとんど変わらない金額です。
また、治験コーディネーターは転職から数年で年収500万円を超えることもあります。
その後も経験を積むことで、600万円程度の年収を目指すことも可能になります。
治験コーディネーターはさまざまな領域の治験に関わるため看護師の時よりも視野が広がる、幅広い疾患や新薬について学べるといったメリットがあります。
また、新薬開発という形で医療に貢献できることもメリットになりそうです。
他にも、被験者から薬の効果について良い報告をもらえるなど気持ちの面でも喜びを感じられる仕事です。
医療機器メーカー(フィールドナース)
医療機器メーカーなどの自社製品の営業サポートを行う企業看護師のことをフィールドナースと言います。
呼び方はさまざまでクリニカルコーディネーター、クリニカルスペシャリストと呼ぶことも。
主な仕事は自社製品のプロモーション活動です。
営業担当病院やクリニックを訪問し、看護師目線で製品をプレゼンテーションしたり、看護師に対し自社製品の使い方の説明会を開くなど、製品の販売促進をサポートします。
自社製品のプレゼンテーションでは、臨床現場での経験談を活かしながら自社製品のメリット説明したり、医師のスケジュールを考えながらプレゼンのアポイントを取るといった看護師の経験を活かすことができます。
自社製品を納入した後の動作説明や指導も重要な仕事です。
現場の経験があるからこそ使いにくさを先回りして説明するなどの気遣いが必要とされます。
看護師が自社製品を使いこなせるような配慮もアフターフォローのひとつです。
看護師資格や臨床経験が必須ですが、ビジネスマナーや運転免許も必要なスキルです。
外資系の医療機器メーカーに就職した場合には、ある程度の英語力が必要となることもありますので、確認してくださいね。
年収はおおよそ600万〜900万円と高水準です。
その分、実力で評価されることも増え、外資系では、TOEICのハイスコアを持っていると年収1000万円を超える可能性もあります。
成果主義である分、看護師時代よりも高い年収を稼げる可能性が大いにある職業です。
自分に合う就職先を見つけるには
自分に合う就職先を見つけるには、まずは自己分析や企業研究、エージェントの活用、知人の口コミなんかも頼りたいですね。
好きなことや得意なことを活かせるよう、興味のある仕事について調べてみたり、職場見学をして働いている姿を想像することも大切です。
自己分析
自身に合った職場を見つけ、就職後のミスマッチを防ぐために自己分析は必要です。
自己分析では、自分の性格をはじめ、強みや弱み、これまでの経験やスキルも整理できます。
価値観、看護観なども整理しておくと就活時に役立ちます。
また、自分のこと以外にも、転職先に求める条件面や優先順位も整理しておきましょう。
順序立てて自分の性格などの洗い出し、経験・スキルの整理を行い、それと同時になぜ転職したいのかや悩み、キャリアプランも見直します。
その上で、転職先に求める条件を整理し、優先順位をつけます。
自己分析を行うことで、自分の適性がわかり、転職するにおいてで譲れない条件や気をつけたいポイントが明確になります。
自己分析ツールの利用もおすすめです。
そうすることで、就職した後のギャップを少なくすることができ、後悔のない転職につながります。
エージェントを頼る
転職エージェントといってもたくさんあるので自分に合うエージェントに出会うのはなかなか難しいものです。
まず、エージェントを検索すると思いますが、その際に求人の数、掲載されている求人の質、全国対応かどうかなどのエリア、どんなサポートをしてくれるかなどに注目してみるといいかもしれません。
選ぶ転職エージェントによって、大きく転職の結果が変わるので、しっかり見極めたいところです。
利用者が40万人のと多いレバウェル看護、顧客満足度の高いナース専科、マイナビが提供するマイナビ看護師は大手らしいサポート体制が魅力です。
サイトごとに特徴が異なりますし、してほしいサポートが叶うかどうかが一番重要です。
サイトの利用者の口コミもチェックしてみましょう。
利用するエージェントを決めたら、こまめな連絡を心掛けましょう。
転職への意欲の高さをアピールできるので、条件の良い求人を紹介してもらえる可能性が高まるためです。
それだけでなく、人気の求人は掲載してすぐに締め切りになることもあるので、新鮮な情報を収集するためにも連絡はこまめに取ることをおすすめします。
加えて、履歴書作成や面接日程の調整などエージェントを通しての相談が必要項目もあるので連絡は取れる状態にしておきたいところです。
もちろん、一社だけにエージェントを決める必要はないので、合わないと感じたら違うエージェントを利用するなどして納得のいく転職活動ができる環境を整えましょう。
知人などから情報を得る
すでに転職経験のある知人や同僚を頼るのも一つの手です。
上手くいけば、同じ会社に就職できる手立てになるかもしれません。
ただ、頼る際には注意したいポイントも。
看護師である知人と一般企業の知人では、看護師という仕事への理解度が異なります。
一般企業への就職を考える場合には、一つの意見として受け止める必要もありますし、看護師とは異なる世界であることを念頭に置いておきましょう。
その上で目指す方向を整理したり、求人の優先順位をつけることにつなげましょう。
就職先を選ぶときの注意点
やみくもに転職活動をしても、失敗や後悔につながることがあります。
自身の価値を下げてしまうこともあるので、注意したいポイントをチェックしておきましょう。
新卒の場合
技術や知識、スキルは経験のある先輩にどうしても劣ります。
だからこそ、清潔感や常識ある姿が求められるため、服装や身だしなみには注意しておきます。
もちろん、希望条件を明確にしておくこと、応募先の職場の雰囲気の確認などは抑えておきます。
新人ならではのポイントとして、研修体制や自立までのイメージは面接で質問するなどして自分の望む条件に合うかを判断しましょう。
その際に、将来なりたい姿も併せてイメージできると長期のキャリアプランが考えやすくなります。
面接の際には、謙虚に明るく新人らしい対応をすること、スキル面で嘘をつかないことも意識して臨みましょう。
転職する場合
自己分析や希望条件の整理はもちろんのこと、転職したいのになかなか決まらない焦りを感じても焦らない心を持つことが重要です。
なかなか決まらない状況が続くと、どうしても気持ちは焦ります。
つい弱気になって条件を妥協してしまったり、当初の目標に蓋をして、一刻も早く転職活動を終わらせることが目的にすり替わってしまうことがあります。
ここで焦って転職先を決めてしまうと、後悔につながります。
転職活動は長期化してしまうものだと思い、ある程度気長にトライすることが大切です。
病院を希望する場合
今回は主に病院以外の就職先について触れてきましたが、病院も転職の視野に入れる方もいらっしゃるはずです。
病院への転職、病院から病院への転職を希望する場合、目指す看護や働き方を改めて考えてみましょう。
診療科や待遇、人間関係と確認することは多岐に渡ります。
希望する診療科で働くには、面接のタイミングで伝えておくことが大切です。
勤務形態は、シフトの組み方や休みの取り方、夜勤の頻度なども希望条件と照らし合わせます。
それに乗じた手当やボーナスの有無も要チェックです。
こうした条件面の確認と同時に、職場の雰囲気や人間関係も重要なポイントなので確認しておきます。
働く人の表情や会話の内容から雰囲気をつかみ、自分に合うかの判断材料にします。
転職サイトや口コミサイトで情報を得たり、現職で働いている先輩や知人から直接話を聞くのも一つの手です。
病院以外を検討する場合
転職後のミスマッチを減らすための注意点をご紹介します。
看護師は夜勤手当や深夜手当といった手当の割合が大きい傾向にあるため、給料が高い傾向にあります。
しかし、病院以外に転職すると、病棟勤務のときよりも給料が下がってしまう場合があります。
給与が下がる場合でも、納得しての転職であれば入職後のミスマッチを減らせます。
病院勤務に比べ、事務作業が発生したり、営業活動などの看護以外の業務が負担に感じてしまうことがあります。
こうした看護以外の業務が難しいと感じたり、できないと感じることもあるのでどんな仕事なのかは面接の際などに細かく聞いておくとイメージしておきやすいです。
病院以外の職場では、医療処置に関わる機会が多くないので、看護スキルを磨きにくい場合があります。
ここにストレスを感じる方も。
看護師としてのキャリアアップやスキルアップを望んでいる場合には、物足りなさを感じることもあります。
自身のキャリアプランと照らし合わせて検討することが重要です。
どんな職場にも人間関係の難しさは生じますが、看護師とは異なる職種に転身することでこれまで違う形で人間関係に悩むことがあります。
会社員としての関わりになるので、就職先によってはテンポや考え方が合わず苦痛になることも。
無理はしすぎず、柔軟性をもってこんな世界、人もいるんだなと大らかにコミュニケーションスキルを発揮することも大切です。
まとめ
病院で働くイメージの強い看護師ですが、実は一般企業でも看護師資格を活かした働き方ができます。
給料や待遇を確認して、キャリアプランと相談して転職や就職に臨みましょう。
病院に勤務する、それ以外の職場に勤務するどちらの場合においても
「どんな職場で働きたいか」「自分の軸はなにか」を意識しておきましょう。