「妊婦さんの血圧が95/60mmHgです。これって低すぎますか…?」
「脈拍100回/分って頻脈ですよね?」と、産科に配属されたばかりだと判断に迷いますよね🩺
この記事では
- 妊娠初期・中期・後期ごとのバイタル変化
- 妊娠期の正常値と“異常”の線引き
- 学生・新人が迷わない報告ライン
が分かりますよ。
結論👉
妊娠期は「血圧はやや低下」「心拍数は増加」が生理的変化です。
ただし、妊娠20週以降の140/90mmHg以上、安静時脈拍100回/分以上の持続、呼吸数24回/分以上などは異常として評価・報告が必要です。
この記事では、妊娠期のバイタルサインを「観察項目シート」として使える形で整理します。
数値だけでなく、妊娠週数や症状とあわせてアセスメントできるようになりましょう😊
目的|妊娠期バイタル観察の意義
妊娠期のバイタルサイン観察の目的は、単に「数値を測ること」ではありません。
大切なのは、妊娠特有の生理的変化を理解したうえで、異常を早期に発見することです。
- 母体の循環・呼吸の変化を把握する
- 妊娠高血圧症候群や感染症などの異常を早期に察知する
- 数値と自覚症状を関連づけてアセスメントする
妊娠期は、循環血液量や心拍出量が増加し、非妊娠時とは“正常の幅”が変わります。
「非妊娠の基準で判断しないこと」が、まず最初の大切なポイントです。
そのうえで、
- 妊娠週数は何週か?
- いつもと比べて変化はあるか?
- 頭痛・動悸・息切れなどの症状はあるか?
といった視点を持つことで、バイタルサインが「ただの数字」から「母体の状態を示すサイン」に変わります🩺
次の章では、なぜ妊娠期にバイタルが変化するのか、生理的な背景を整理していきます。
妊娠期の生理的変化|なぜバイタルサインが変わるの?
妊娠期のバイタル変化を正しく評価するためには、「なぜ変わるのか」を理解しておくことが大切です。
妊娠すると、母体は胎児へ十分な酸素と栄養を届けるために、循環・呼吸の仕組みを大きく変化させます。
① 循環血液量と心拍出量の増加
- 循環血漿量:妊娠で約30〜50%増加
- 心拍出量:妊娠10週頃から増加し、25〜30週頃にピーク(非妊娠時の30〜50%増)
血液量が増えることで、心臓はより多くの血液を送り出す必要があります。
そのため、心拍数は非妊娠時より約10〜20回/分増加するのが一般的です。
妊娠後期に80〜90回/分程度になる妊婦さんが多いのは、この生理的変化によるものです。
② 末梢血管抵抗の低下と血圧の変化
妊娠ではホルモンの影響により血管が拡張し、末梢血管抵抗が低下します。
その結果、特に妊娠初期〜中期にかけて血圧はやや低下します。
妊娠中期(20〜28週頃)は血圧が最も低くなる時期とされています。
「上が90台だから異常」とすぐに判断せず、症状の有無を必ず確認しましょう。
③ 呼吸機能の変化
- 分時換気量の増加
- 一回換気量の増加
- PaCO₂:妊娠中は28〜32mmHgが正常範囲(軽度呼吸性アルカローシス)
呼吸数自体は大きく変わらないことが多いですが、
「息切れしやすい」「浅く速い呼吸に見える」などの変化がみられます。
ただし、安静時の呼吸数が24回/分以上、SpO₂低下、会話困難などを伴う場合は異常を疑います。

このように、妊娠期のバイタル変化は母体が胎児を支えるための適応反応です。
次の章では、妊娠初期・中期・後期ごとの具体的な違いを表で整理していきます。
【初期・中期・後期】妊娠期バイタルサインの変化一覧
妊娠期のバイタルサインは、週数によって変化の出方が異なります。
「時期別の特徴」と「観察の着眼点」をセットで整理すると理解しやすくなりますよ。
| 時期 | 体温 | 血圧 | 脈拍 | 呼吸 | 観察のポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 妊娠初期 (〜15週頃) |
高温相持続 37℃前後の微熱感 |
徐々に低下し始める | 増加し始める | 自覚的息切れあり | ・38℃以上は感染疑い ・動悸は甲状腺疾患も鑑別 |
| 妊娠中期 (16〜27週頃) |
37℃前後が多い | 最も低くなる時期 | 持続的に増加 | 分時換気量増加 | ・立ちくらみ注意 ・収縮期80mmHg未満+症状は要評価 |
| 妊娠後期 (28週〜) |
暑がり・のぼせ感 | 妊娠前値へ戻る傾向 上昇に注意 |
80〜90回/分が多い 100前後もあり |
息切れ増加 | ・140/90以上は妊娠高血圧症候群疑い ・安静時100以上持続は評価 |
特に妊娠中期は血圧が最も低くなるため、上90台でも症状がなければ生理的範囲の場合があります。
一方、妊娠後期は血圧が再び上昇傾向になるため、「後期の血圧上昇」には特に注意が必要です。

次の3点を強調すると理解が深まります。
- ① 週数によって“正常”は変わる
- ② 数値だけでなく症状と合わせて判断する
- ③ 「いつもと違う」を大切にする
次の章では、体温・血圧・脈拍・呼吸を観察項目シート形式で整理します。
観察項目シート|学生・新人さんが見るポイント
ここからは、実習や産科配属でそのまま使える「観察の見方」をまとめます🩺
大事なのは、数字だけを見ないこと。
「その数値、どうして出ているのかな?」と一歩踏み込んで考えられると、ぐっと成長しますよ😊
① 体温
妊娠初期はホルモン(プロゲステロン)の影響で高温相が続きます。
そのため、37℃前後は生理的範囲のことが多いです。
- 測定値(部位・方法も確認)
- 悪寒・咳・排尿痛など感染症状
- 倦怠感・戦慄の有無
報告ライン:38℃以上、または急な上昇
「妊娠だから微熱」と思い込まず、自覚症状を必ず確認しましょう。
② 血圧
妊娠中期は血圧がいちばん低くなります。
「上が95mmHgだけど元気そう…」ということも、実はよくあります。
- 収縮期・拡張期
- 測定体位(座位?仰臥位?)
- 頭痛・むくみ・視覚異常
- 急な体重増加
報告ライン:妊娠20週以降で140/90mmHg以上
さらに、
- 頭痛
- 眼前暗黒感
- 上腹部痛
があれば、妊娠高血圧症候群を疑います。
逆に、収縮期80mmHg未満でめまい・冷汗があれば低血圧でも要注意です。
③ 脈拍(心拍数)
妊娠では心拍出量が増えるため、脈は自然と速くなります。
後期では80〜90回/分くらいはよく見ます。
100回/分前後の妊婦さんもいますが、ここで見るのは「症状」です。
- 動悸はある?
- 息切れは強い?
- 胸痛は?
- 顔色は?
報告ライン:安静時100回/分以上が持続+症状あり
「数字+つらさ」で判断します。
④ 呼吸
妊娠後期になると、「少し動いただけで息が切れる」という訴えが増えます。
これは子宮が大きくなり、横隔膜が押し上げられるためです。
- 呼吸数(安静時)
- 努力呼吸の有無
- SpO₂
- 会話が続くかどうか
報告ライン:呼吸数24回/分以上、SpO₂低下、会話困難
「息苦しい」がいつもより強い場合は、肺塞栓や心不全も鑑別に入ります。
ここまで読んでどうでしょうか?
妊娠期のバイタルは、「非妊娠の基準で怖がらない」でも「妊娠だから大丈夫と決めつけない」ことが大切なんです🌸
次は、教育用にまとめた異常の目安チェックリストを整理しますね。
観察項目シート|新人さんが迷わない見方
ここからは、新人看護師さんが「どう見ればいいのか」にフォーカスして整理します🩺
産科に配属されたばかりだと、
「これって異常?それとも妊娠だから普通?」と迷いますよね。
大丈夫です。判断の軸を一緒に作っていきましょう😊
① 体温|“妊娠だから微熱”で終わらせない
妊娠初期はホルモンの影響で高温相が続きます。
そのため37℃前後はよくある範囲です。
でも新人さんに覚えてほしいのは、ここ👇
- 38℃以上は異常と考える
- 微熱でも咳・排尿痛などがあれば注意
- 「だるい」「寒気がする」の訴えを拾う
体温は“症状とセット”で見る、これが基本です。

② 血圧|“低い=異常”ではない
妊娠中期は血圧がいちばん低くなります。
だから、上が90台でも元気な妊婦さんは珍しくありません。
新人さんが見るべきポイントはここ👇
- 妊娠週数は?(中期なら低めでもあり得る)
- めまい・冷汗はある?
- 頭痛・浮腫・視覚異常はない?
妊娠20週以降で140/90mmHg以上は必ず報告
さらに、
- 「いつもより急に高い」
- 「頭が割れるように痛い」
こうした変化があれば、迷わず先輩に相談です。


③ 脈拍|100回/分はすぐ異常?
妊娠では心拍数が自然と増えます。
後期なら80〜90回/分はよくあります。
100回/分前後の妊婦さんもいます。
新人さんが見るのはここ👇
- 安静時でも続いている?
- 動悸が強い?
- 息切れが悪化している?
- 顔色は悪くない?
「数字+つらさ」で判断するのがポイントです。
④ 呼吸|“苦しい”の裏に何がある?
妊娠後期は横隔膜が押し上げられるため、息切れしやすくなります。
でも、
- 呼吸数24回/分以上
- SpO₂低下
- 会話が続かない
こうした場合は生理的範囲とは言えません。
「いつもより明らかに苦しい」は見逃さないでください。


新人さんに一番伝えたいのは、
妊娠期のバイタルは“普通と違うのが普通”ということ。
でも、その中に隠れた“本当の異常”を見つけるのが、私たち看護師の役割です🌸
異常の目安と報告ライン|新人さんが迷わない基準
ここが一番大事なところです🩺
新人さんが不安になるのは、「これって報告した方がいいのかな…?」という場面ですよね。
まずは、基本の“報告ライン”を整理しておきましょう。
🔎 体温
- 38.0℃以上
- 微熱でも悪寒・戦慄・局所症状あり
妊娠中は37℃前後はあり得ます。
でも38℃以上は“妊娠だから”では片づけません。
🔎 血圧
- 妊娠20週以降で140/90mmHg以上
- 普段より急に上昇
- 頭痛・視覚異常・上腹部痛を伴う
140/90mmHg以上は必ず報告
「様子見かな…」と迷うラインではありません。
逆に、
- 収縮期80mmHg未満
- めまい・冷汗・顔面蒼白あり
なら、低血圧でも要評価です。

🔎 脈拍
- 安静時100回/分以上が持続
- 動悸・息切れ・胸痛を伴う
- リズム不整
妊娠では脈は速くなります。
でも“つらさがある頻脈”は別問題です。
🔎 呼吸
- 呼吸数24回/分以上
- SpO₂低下
- 会話が続かない
- 急な呼吸困難感
呼吸の異変は急変につながる可能性がある
「妊娠後期だから苦しいのかな」で終わらせないでください。
🌸 新人さんへのまとめポイント

- 妊娠週数を必ず確認する
- “いつもと違う”を大切にする
- 数値+症状で判断する
- 迷ったら相談する
完璧じゃなくて大丈夫です。
でも、「あれ?」と感じる感覚は大事にしてください。
それはもう、看護師としての大切な力です🌸
バイタル測定時の共通注意点|新人さんが押さえておきたいこと
バイタルは「その瞬間の数字」だけを見ても意味がありません。
新人さんに特に意識してほしいのは、この3つです。

① 同じ条件で測る
- 測定前に安静を保つ
- 体位を確認する(座位?仰臥位?)
- 毎回できるだけ同じタイミングで測定する
妊娠後期では、仰臥位低血圧症候群が起こることがあります。
仰向けで急に血圧が下がった場合は、左側臥位へ体位変換を。

② 妊娠週数を必ずセットで考える
同じ血圧でも、
- 妊娠中期の95/60
- 妊娠後期の140/90
では意味がまったく違います。
「週数を見ずに判断しない」は鉄則です。
③ 全身状態を見る
- 顔色
- 冷汗
- 意識レベル
- 訴えの変化
バイタルは“身体のサイン”のひとつにすぎません。
数字が正常でも、「いつもより元気がない」「なんか様子が違う」は大事な情報です。
✅まとめ|この記事で学べる妊娠期バイタルの正常値
この記事での再重要部位👉
- 妊娠中期は血圧が最も低くなる
- 心拍数は非妊娠時より10〜20回/分増加
- 妊娠20週以降の140/90mmHg以上は要報告
記事のまとめ
妊娠期のバイタルは、「いつもと違う」のが前提です。
でもその中に、妊娠高血圧症候群や感染、循環不全などのサインが隠れていることもあります。
妊娠週数+数値+症状をセットで考える。
それができれば、新人さんでもしっかりアセスメントできます。
不安になったときは、「確認する力」があれば大丈夫。
あなたの“気づき”は、ちゃんと母児を守る力になりますよ🌸🩺
引用
- 日本産科婦人科学会(JSOG)産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
- 日本産婦人科医会 妊娠高血圧症候群関連資料
- 日本助産師会 ガイドライン関連資料
- 厚生労働省関連資料(妊娠中の検査基準など)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/★参考資料1 望ましい基準記載の妊娠中の検査_0.pdf
- FCCS OB Chapter:Physiologic Changes During Pregnancy