
「鼻腔吸引をするとき、患者さんが痛がってしまう…」「鼻出血を起こしてしまって自信がなくなった…」「正しい吸引の深さや圧力がわからなくて不安…」
そう悩んでいる看護師さんも多いのではないでしょうか。
実は、鼻腔吸引は正しい知識と技術があれば、患者さんに苦痛を与えず安全に行うことができるんです!🌟
この記事では
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鼻腔吸引の正確な手順と5つのステップ
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粘膜損傷を防ぐための具体的なテクニック
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適切な吸引圧と挿入の深さ(15~20cm)の目安
- 鼻出血などのトラブル対処法
が分かりますよ♪
鼻腔吸引を安全に行うためには、解剖学的知識を踏まえた正確な手技と、合併症を予防するための細やかな配慮が重要です。
特に鼻甲介や鼻孔の構造を理解し、適切な角度でカテーテルを挿入することがポイントになります。
この記事では、新人看護師さんでも自信を持って実践できる鼻腔吸引の手順から、ベテラン看護師が実践している合併症予防のテクニックまで詳しく解説していきます😊
鼻腔吸引を安全に行うためには、適切な準備と必要物品の確認が欠かせません。
ここでは、スムーズな吸引のための準備から患者さんへの説明方法、感染対策まで詳しくご紹介します。
鼻腔吸引を行う際に必要な物品をしっかり準備しておくことで、手技がスムーズに進みます。
必要物品 | 準備のポイント |
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吸引器 | 事前に動作確認を行い、吸引圧が適切に調整できることを確認 |
吸引カテーテル | 患者さんの年齢や状態に合わせたサイズを選択(成人は12〜14Fr程度) |
滅菌手袋 | 片手法の場合は利き手用に1枚、両手法の場合は2枚準備 |
滅菌精製水 | カテーテルの通過性確認と洗浄用に十分量用意 |
使い捨てエプロン | 体液の飛散防止のため着用 |
マスク・ゴーグル | 感染対策として必須 |
廃棄用ビニール袋 | 使用後の物品をすぐに廃棄できるよう準備 |
記録用紙 | 吸引内容や患者の反応を記録するために用意 |
これらの物品を使いやすく配置し、手技の途中で中断することがないよう工夫しましょう。
特に吸引カテーテルのサイズ選択は重要です。
大きすぎると粘膜損傷のリスクが高まり、小さすぎると効率よく吸引できません。
患者さんの不安を軽減し、協力を得るための説明は非常に重要です。
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「鼻の中の痰や分泌物を取り除くために吸引を行います」と目的を伝えましょう。 -
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「チューブを入れる時に少し違和感があるかもしれませんが、すぐに終わります」と正直に伝えることで信頼関係が築けます。 -
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「不快感があれば手を挙げてください」など、コミュニケーション方法を事前に決めておくと安心です。 -
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「吸引を始めてもよろしいですか?」と必ず確認しましょう。
意識レベルが低い患者さんの場合でも、これから行うことを説明することが大切です。
ご家族がいる場合は、ご家族にも説明を行いましょう。
感染対策は患者さんと看護師双方を守るために欠かせません。
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吸引前後に必ず手指消毒または手洗いを行いましょう。 -
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マスク、ゴーグル、エプロン、手袋を正しい順序で着用します。 -
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カテーテルの無菌性を保つため、触れる部分を最小限にしましょう。 -
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使用済みカテーテルは一回ごとに交換し、適切に廃棄します。 -
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吸引後は周囲の環境を清潔に保ちましょう。
これらの感染対策を徹底することで、院内感染の予防につながります。
特に免疫力の低下した患者さんに対しては、より慎重な対応が必要です。
鼻腔吸引を効果的に行うためには、正しい手順と技術が必要です。
ここでは基本的な体位の取り方からカテーテル挿入のコツ、適切な吸引圧の管理まで解説します。
適切な体位と環境整備は、安全で効果的な吸引の基本となります。
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仰臥位または半座位が基本です。頸部を若干後屈させると鼻腔が直線化し、カテーテルが挿入しやすくなります。
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- プライバシーを確保するためカーテンを閉める
- 十分な照明を確保する
- 必要物品を手の届く範囲に配置する
- 患者さんの胸元にタオルを敷き、衣服の汚染を防ぐ
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ベッド柵を活用し、急な体動による事故を防止しましょう。
体位変換が困難な患者さんの場合は、無理に理想的な体位にせず、安全を優先して工夫しましょう。
側臥位でも頭部の位置を調整することで吸引は可能です。
鼻腔吸引を成功させるカテーテル挿入のコツをご紹介します。
土屋ケアレッジより画像引用
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鼻腔底に沿って、やや下向きに挿入します。天井に向かって挿入すると鼻甲介を傷つける恐れがあります。 -
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カテーテル先端に滅菌水または水溶性潤滑剤を付けると、挿入時の摩擦が減少し、粘膜損傷のリスクを軽減できます。 -
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カテーテルをゆっくりと回転させながら進めると、抵抗が少なく挿入できます。 -
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抵抗がある場合は一度引き戻し、角度を変えて再挿入を試みましょう。 -
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成人では鼻腔から15〜20cm程度が目安です。必要以上に深く挿入すると咽頭反射を誘発する可能性があります。
これらのコツを実践することで、患者さんの苦痛を最小限に抑え、効果的な吸引が可能になります。
特に初めて吸引を行う患者さんには、より慎重な対応を心がけましょう。
吸引圧と時間の適切な管理は、効果的な吸引と合併症予防の鍵となります。
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- 一般的に80〜120mmHg(10.6〜16kPa)が推奨されています
- 粘稠度の高い分泌物の場合は、やや高めの圧が必要な場合もあります
- 必要以上に高い圧は粘膜損傷のリスクを高めるため注意が必要です
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- 1回の吸引は10〜15秒以内に留めましょう
- 長時間の吸引は低酸素状態を引き起こす可能性があります
- 必要に応じて30秒以上の間隔を空けて再吸引を行います
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- 患者さんの表情や反応
- SpO2値の変化
- 不整脈の出現
- 分泌物の性状と量
対象 | 推奨吸引圧 (mmHg) | 推奨吸引圧 (kPa) |
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新生児 | 60〜80 | 8.0〜10.6 |
乳幼児 | 80〜100 | 10.6〜13.3 |
小児 | 80〜120 | 10.6〜16.0 |
成人 | 100〜120 | 13.3〜16.0 |
高齢者 | 80〜100 | 10.6〜13.3 |
吸引圧は患者さんの状態や分泌物の性状によって調整が必要です。
特に高齢者や小児は粘膜が脆弱なため、低めの圧設定から始めることをおすすめします。
安全で効果的な鼻腔吸引を行うためには、解剖学的知識に基づいたテクニックが重要です。
ここでは粘膜損傷を防ぐ方法から、トラブル時の対応まで詳しく解説します。
鼻腔粘膜は非常にデリケートで、不適切な挿入方法により容易に損傷します。
:鼻腔底に沿って、やや下向き(床と平行)に挿入します。上向きに挿入すると鼻甲介を傷つける可能性が高まります。
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- 成人:15〜20cm
- 学童:10〜15cm
- 幼児:8〜10cm
- 乳児:5〜8cm
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- 無理な力を加えない
- 抵抗を感じたらすぐに角度を変える
- 片側の鼻腔から挿入できない場合は反対側を試みる
解剖学的に鼻腔は複雑な構造をしているため、カテーテルの進行方向を常に意識することが大切です。
特に初めて吸引を行う患者さんには、より慎重な対応を心がけましょう。
鼻甲介は血管が豊富で、傷つけると出血しやすい部位です。
やさしい手技で鼻甲介を保護しましょう。
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カテーテル先端を滅菌水で湿らせることで、粘膜との摩擦を減らします。 -
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急激な動きは避け、ゆっくりと丁寧に操作します。 -
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カテーテルを優しく回転させながら挿入すると、抵抗が少なく進めることができます。 -
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患者さんの鼻腔の大きさに合わせたサイズを選びましょう。 -
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カテーテルを挿入した後、引き抜きながら間欠的に吸引を行うことで、粘膜が吸引口に吸い込まれるリスクを減らせます。
「やさしさ」は技術の基本です。
患者さんの苦痛を最小限にするためにも、常に優しい手技を心がけましょう。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科より画像引用
キーゼルバッハ部位(鼻中隔前方部)は血管が集中し、出血しやすい部位です。この部位を避けるコツをご紹介します。
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:鼻中隔側ではなく、鼻腔の外側(鼻翼側)に沿わせるようにカテーテルを進めます。
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:可能であれば、ペンライトなどで鼻腔内を確認しながら挿入すると安全です。
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:キーゼルバッハ部位は鼻孔から約1.5cm内側の鼻中隔にあることを意識しましょう。
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:過去に鼻出血の既往がある患者さんは特に注意が必要です。
キーゼルバッハ部位からの出血は止血が難しいことがあります。予防が最も重要ですので、解剖学的知識を活かした慎重な手技を心がけましょう。
吸引カテーテル挿入時に抵抗を感じた場合の適切な対処法です。
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抵抗がある場合は、無理に押し込むことは絶対に避けましょう。粘膜損傷や出血の原因となります。 -
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カテーテルを少し引き抜き、挿入角度を微調整して再度試みましょう。 -
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一方の鼻腔からうまく挿入できない場合は、反対側を試みることも有効です。 -
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抵抗が強い場合は、より細いカテーテルへの変更を検討しましょう。 -
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必要に応じて潤滑剤を追加することで、挿入がスムーズになることがあります。
抵抗を感じた時点で一度立ち止まり、原因を考えることが重要です。
焦らず、患者さんの状態を観察しながら対応しましょう。
鼻腔吸引中に起こりうるトラブルとその対処法について解説します。
適切な対応で患者さんの安全を確保しましょう。
鼻腔吸引中に鼻出血が発生した場合の応急処置です。
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出血を確認したら、すぐに吸引を中止しましょう。
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- 前傾姿勢をとってもらう(意識がある場合)
- 顎を軽く引いた状態で保持する
- 鼻翼を5〜10分間圧迫する
- :鼻根部や後頸部に冷却材を当てると、血管収縮を促し止血効果が期待できます。
:出血が持続する場合は速やかに医師に報告し、指示を仰ぎましょう。
:出血量、時間、患者さんの状態を記録し、継続的に観察します。
鼻出血は多くの場合、適切な圧迫で止血可能です。
しかし、抗凝固薬を服用中の患者さんでは止血に時間がかかることがあるため、より慎重な対応が必要です。
患者さんが不快感や痛みを訴えた場合の適切な対応方法です。
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患者さんが不快感を示したら、まず吸引を中止しましょう。
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「大丈夫ですよ」「もう少しで終わります」など、安心できる声かけを行います。
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不快感の原因を患者さんに説明し、理解を得ることで不安を軽減できます。
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- 吸引圧が高すぎないか
- カテーテルの挿入角度は適切か
- 吸引時間が長すぎないか
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不快感の原因を特定し、次回の吸引では改善策を講じましょう。
患者さんの反応を常に観察し、苦痛を最小限にする配慮が大切です。
特に初めて吸引を経験する患者さんには、丁寧な説明と声かけを心がけましょう。
分泌物がうまく吸引できない場合の原因と解決策です。
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- 原因:粘稠な分泌物によるカテーテルの詰まり
- 解決策:カテーテルを交換する、または滅菌水で洗浄する
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- 原因:設定圧が低すぎる、吸引器の不具合
- 解決策:適切な圧力に調整する、吸引器の点検を行う
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- 原因:カテーテルが分泌物に到達していない
- 解決策:挿入角度や深さを調整する
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- 原因:脱水や加湿不足による分泌物の粘稠化
- 解決策:加湿を十分に行う、必要に応じて気道内の加湿を検討する
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- 原因:鼻中隔湾曲などの解剖学的特徴
- 解決策:反対側の鼻腔を試す、医師に相談する
吸引できない原因を冷静に分析し、適切な対応を取ることが重要です。
無理な吸引は避け、状況に応じて医師に相談しましょう。
様々な状況や患者さんの特性に応じた鼻腔吸引のテクニックを解説します。
個別の状況に合わせた対応で、より安全で効果的な吸引を目指しましょう。
意識レベルが低い患者さんは自己喀出が困難なため、適切な吸引が特に重要です。
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意識レベルが低くても、必ず声かけを行いましょう。聴覚は最後まで残る感覚と言われています。
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- 頭部を横に向ける(誤嚥予防)
- 頸部を若干伸展させる(気道確保)
- 必要に応じて介助者の協力を得る
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- 呼吸状態の変化
- 顔色の変化
- バイタルサインの変動
- SpO2値の低下
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吸引後も呼吸状態や酸素化が改善しているか確認しましょう。
意識レベルが低い患者さんは咳嗽反射が低下していることが多いため、より慎重な吸引操作が求められます。
また、吸引の必要性をより頻繁に評価することも重要です。
鼻腔が狭い患者さんへの吸引は特に難易度が高く、工夫が必要です。
:通常より1〜2サイズ細いカテーテルを選択しましょう。
:水溶性潤滑剤を適切に使用し、挿入をスムーズにします。
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- より慎重に角度を調整する
- 鼻腔底に沿って水平に挿入する
- 必要に応じて鼻鏡で鼻腔内を確認する
:鼻腔からの挿入が困難な場合は、口腔からの吸引を検討しましょう。
:慢性的に鼻腔が狭い場合は、耳鼻科医師への相談も検討します。
鼻腔が狭い患者さんへの吸引は無理をせず、患者さんの苦痛や負担を常に観察しながら行いましょう。
必要に応じて別の方法を検討することも大切です。
小児への鼻腔吸引は、成人とは異なる解剖学的特徴や心理面への配慮が必要です。
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- 年齢に応じた説明
- 人形などを使ったデモンストレーション
- 保護者の同席と協力
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- より細いカテーテルの使用
- 低めの吸引圧設定(80〜100mmHg)
- より短い吸引時間(5〜10秒)
- 優しく素早い操作
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- 保護者に抱っこしてもらう
- 頭部を固定する介助者を確保する
- 安全確保のためのラッピング法の活用
:処置後に褒めることで、次回の吸引への恐怖心を軽減できます。
小児は解剖学的に気道が狭く、粘膜も脆弱です。
また、処置への恐怖心も強いため、心理面への配慮が特に重要となります。
年齢 | 挿入の深さ目安 |
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新生児 | 4〜5cm |
乳児(〜1歳) | 5〜8cm |
幼児(1〜6歳) | 8〜10cm |
学童(6〜12歳) | 10〜15cm |
思春期(12歳〜) | 15〜18cm |
これらの数値はあくまで目安です。個々の小児の体格や状態に合わせて調整しましょう。
特に小さな子どもほど、慎重な深さの調整が必要です。
鼻腔吸引の極意を身につけて、患者さんに優しいケアを実践しましょう 💫
鼻腔吸引は看護技術の中でも繊細さと正確さが求められる手技です。
この記事では、安全で効果的な鼻腔吸引のための準備から実践テクニック、トラブル対応まで詳しく解説しました。
適切な物品準備と感染対策、正しい体位の取り方、カテーテル挿入の5つのコツ、そして年齢や状態に応じた個別対応まで、現場ですぐに活かせる知識とテクニックをお伝えしました。
特に粘膜損傷を防ぐための「やさしい手技」や間欠的吸引の実施は、患者さんの苦痛を最小限に抑える重要なポイントです。
鼻腔吸引の技術は経験を重ねることで上達します。この記事で学んだ知識を基に、日々の実践の中で自分なりのコツを見つけていただければ幸いです。
患者さんに安心と信頼を与える、優しく確実な鼻腔吸引を目指しましょう。