「しごと・レトリバー」は、看護・介護・薬剤師・保育など現場で働く方々に向けて、転職・キャリアの“リアル”を届けるメディアです。
今回お話を伺ったのは、幼稚園教諭から保育士、そして園長へとキャリアを重ね、3児の母として子育ても両立してきた ひよこママさん。
30人超のクラス担任を任されて培った「集団を動かす力」。
保育園では保護者支援や障害児支援への関心を軸に実践を深め、園長となった今は、先生たちの育成・園運営・保護者対応まで“全体を見る視点”で現場を支えています。
理想と現実のはざまで揺れる配置や安全配慮、やってみたい保育とリスク管理のせめぎ合い――。
一方で、先生や子どもたちの成長を間近で感じられる喜びも確かにある。
「夕食は朝に作る」「家族と役割をすり合わせる」など、家庭と仕事を同時に回すためのリアルな工夫も惜しみなく語ってくれました。
本インタビューでは、園長への挑戦理由、現場の期待と現実のギャップ、
指導で大切にしている視点、園の規模や方針の違いによる働き方の変化、
そしてキャリアアップを目指す人への具体的アドバイスまで――
ひよこママさんの“等身大のリアル”をお届けします。
1. 幼稚園教諭から園長へ挑戦した理由と、期待と不安
しごレト編集部:幼稚園教諭から保育士へ、そして園長へ転職/昇格しようと思った一番の理由は何でしたか?期待していたことと不安だったことがあれば教えてください。

ひよこママさん:
幼稚園教諭から保育士への転職を考えたきっかけは、「保護者支援」や「障害児支援」にもっと関わりたいと思ったからです。
その分野で活躍するには、保育士としての実績が必要だと考えていました。最初は専門職への転職も視野に入れていましたが、結婚や子育てを経験する中で、働きやすさを重視するようになり、結果的に通いやすさを優先して保育園に転職しました。そこで園長への打診を受けました。
最初は家庭との両立が不安で一度は断ったんです。当時は、子どもの体調不良の対応も私が担っていて、「園長なのに休んでいいのか?」と葛藤もありました。また、園運営や役所とのやり取りも未経験だったため、実務面の不安もありました。でも、理事長先生から「最終的な責任は自分が取るから安心して」と言ってもらえたことで、背中を押されました。
「あなたはいつか園長になる」と前職の園長先生に言われた言葉も心に残っていて、挑戦する決意につながったと思います。期待していたのは、「良い園をつくりたい!」という気持ちと、「やってみたい」という前向きな想いでした。役職経験はあったものの管理職は初めて。でも、その分新たな成長のチャンスだと感じました。
しごレト編集部:園長になった今も、原点にあるのは「子どもと家庭を支えるための転職」だったのですね。不安と期待の両方を抱えながらも挑戦する姿が印象的です。
2. 幼稚園教諭の経験が園長業務にどう生きているか
しごレト編集部:幼稚園教諭だった頃の経験で、現在の園長業務に特に役立っていることは何ですか?具体的な場面があれば教えてください。

ひよこママさん:
30人以上のクラスを1人で担任していたので、「集団をまとめる力」は自信につながっています。幼児クラスの担任経験があるからこそ、現場の先生たちの悩みに共感しながら、具体的なアドバイスができています。運動会や発表会など、行事の進め方やイメージも湧きやすく、指導にも活かせています。
しごレト編集部:現場経験があるからこそ、園長になった今も先生たちの相談に寄り添えるのですね。
3. 現場の期待と現実のギャップ
しごレト編集部:園長としての立場で最も「現場の期待」と「現実」のギャップを感じる部分はどこでしょうか?

ひよこママさん:
一番感じるのは「人員体制」と「保育内容」に関するギャップです。保育士はみんな、できるだけ丁寧に一人ひとりに寄り添った保育をしたいと思っています。でも、集団生活の中ではどうしても人手が足りないと感じる場面が出てきます。国の配置基準より多めに職員を配置していても、活動内容やその日の状況によっては余裕がなくなることも多いです。
また保育内容についても、「これをやってみたい」「こんな道具を取り入れたい」という現場の希望が、すべて通るわけではありません。やりたい保育がリスクのある内容であれば、簡単にGOサインは出せませんし、安全面や全体のバランスを考えて判断する必要があります。
しごレト編集部:理想と現実の狭間で判断を迫られる立場ならではの悩みが伝わってきます。
4. 園長業務で最も大変なこと
しごレト編集部:園長業務で特に大変だと感じるのはどんなことですか?

ひよこママさん:
やはり「保育士の指導・育成」だと思います。保育の内容だけでなく、社会人としての基本的なスキルやコミュニケーションの取り方まで幅広く関わる必要があります。一人ひとりに課題があり、それぞれの成長を支援するには、時間もエネルギーもかかります。特に役職者(リーダーや主任)の育成は、保育だけでなくマネジメント面でも関わることが多く、難しさを感じています。
しごレト編集部:園長は子どもだけでなく先生の育成も担うのですね。責任の重さが伝わります。
5. 子育てと園長業務の両立
しごレト編集部:子育てと園長業務を両立する中で、工夫や苦労はありましたか?

ひよこママさん:
たくさんあります(笑)。例えば、1週間分の無理のない献立を考えておく、朝のうちに夕食の下ごしらえを終えておく、冷凍食品も利用する、週末にまとめて買い物をするなど…少しでも楽ができるように時間の使い方を工夫しています。
夫との役割分担も、少しずつできるようになってきましたが、当初は子どもの体調不良への対応はすべて私が担っていて、本当に大変でした。特に慣らし保育の時期は、母が泊まり込みで手伝ってくれたこともあります。今は夫と交代で休みを取るなどやりくりしながら対応していますが、スケジュール管理は今も悩みのタネです。
しごレト編集部:母としてのリアルな工夫が、同じ立場の方に響きそうです。
6. 園長に求められる力と視点
しごレト編集部:幼稚園教諭時代と比べて「園長として求められる力」は何でしょうか?

ひよこママさん:
大きな違いは「園全体を俯瞰して見る力」だと思います。保育の現場だけでなく、保護者対応や職員育成、園の方針決定など多方面に目を向ける必要があります。そのためには広い視野・傾聴力・判断力が不可欠です。
また、保護者の中には「園長」という肩書を重視される方もいらっしゃいます。「園長としてどう見られているか」を常に意識しながら接することも大切だと感じています。
しごレト編集部:現場から全体を見渡す立場になったからこその視点ですね。
7. 保護者・地域・行政との関わりで感じた理想と現実
しごレト編集部:園長として保護者・地域・行政との関わりで感じたことはありますか?

ひよこママさん:
やはり、保護者の中には「自分の子どものことだけ」を考えていて、集団生活という視点を持っていないと感じる場面があります。保護者支援をしたい気持ちは常にありますが、その思いと実際のギャップにもどかしさを感じることもあります。
しごレト編集部:保護者支援をしたい気持ちと、現実のギャップをどう埋めるかが課題ですね。
8. 園長としてのやりがい
しごレト編集部:園長として「やりがい」を感じる瞬間はどんな時ですか?

ひよこママさん:
子どもたちの成長はもちろんですが、先生たちの成長や成功体験を一緒に喜べる瞬間にも大きなやりがいを感じます。行事なども、かつては自分のクラスだけの達成感でしたが、今は園全体を見て「よくがんばったね」と感じられるのが嬉しいです。先生たちが元気に、楽しそうに働いている姿を見ると「やっていてよかった」と心から思います。
しごレト編集部:園全体の成長を喜べるのは園長ならではの醍醐味ですね。
9. 園の規模や保育方針の違いによる影響
しごレト編集部:園の規模や方針によって働き方や指導に影響はありますか?

ひよこママさん:
かなり違いがあるように感じます。例えば公立園はベテラン職員が多く、研修制度も充実している印象です。一方で、保護者対応の面では私立の方が丁寧で柔軟だと、どちらにも子どもを預けたことがある保護者としては感じます。
また、認可と認可外で社宅制度などの福利厚生に違いはあるものの、保育そのものに大きな差は感じていませんが、保育士資格を持たない先生が多く働いていたり、正社員の先生が少ない園もあったりします。
小規模園ではワンフロアで全職員が子どもを“みんなで見る”形になるため、保育者同士の連携や協力体制がより重要になります。保育方針によっても働き方は大きく異なり、行事が一切ない園、行事に力を入れている園、自由保育、教育重視…その園が大切にしていることによって学ぶことや働き方は違ってくると感じています。
しごレト編集部:園の形態によって、保育者に求められる動き方も変わるのですね。
10. キャリアアップを目指す人へのアドバイス
しごレト編集部:これから幼稚園教諭・保育士・園長を目指す人に伝えたいことは?

ひよこママさん:
まず大切なのは、家族の理解と協力を得ることです。
この仕事は行事や行動の節目などで「どうしても外せない日」があります。
その時に備えて、ファミリーサポートの登録やミールキットの活用など、生活面のサポート体制を整えておくと安心です。
そしてもうひとつ大切なのは、「素直な気持ちを持ち続けること」
子どもたち、保護者、そして一緒に働く仲間など、さまざまな人と関わる仕事だからこそ、自分を見つめ、成長していく姿勢が何よりも大切だと思います。
保育の仕事は子どもたちと密に過ごせる仕事です。
驚きや感動はもちろん、とにかくたくさん笑って過ごせることが魅力です!
大変なことも多いですが、その分やりがいは本当に大きいです。
責任が増えたり、思い通りにいかないこともありますが、子どもの笑顔や「できた!」という瞬間に立ち会える喜びは、何ものにも代えがたいものです。
この仕事には、大変さ以上に、温かさと感動がたくさん詰まっています。「大変そう」と感じることがあっても、まずは一歩ふみだしてみてください。
きっと、子どもたちとともに、自分自身も大きく成長できると思います。
しごレト編集部:家庭と仕事の両立を支える具体的なヒントですね。
最後に
ひよこママさんの歩みは、ただのキャリアアップではなく「家庭と仕事をどう両立するか」「現場と理想のギャップをどう乗り越えるか」というリアルな問いの連続でした。
園長として求められる責任の重さに迷いながらも、先生たちの成長を喜び、子どもたちの毎日に寄り添い続ける姿は、まさに保育士一人ひとりに響くはずです。
キャリアを重ねる中で忘れがちな“素直さ”や“支えてくれる人への感謝”を大切にしつつ、自分自身の働き方を見直すきっかけになる記事になったのではないでしょうか。
プロフィール
ひよこママ

大学卒業後、幼稚園教諭として勤務し、子どもたちとの関わりだけでなく保護者支援にも興味を持ち保育士へ転職。現在は保育園の園長として働きながら3児の母として子育てにも奮闘中です。
保育士としての経験と母としてのリアルな視点を活かして子育てや保育に役立つ情報をブログで発信しています。
ブログリンク:https://kodomobiyori.com