「人工呼吸器の設定に“フロートリガー”って出てきたけど、どういう意味なんだろう?」
「プレッシャートリガーとは何が違うの?どっちが患者さんにやさしいの?」
この記事では
- フロートリガーの基本的な仕組み
- 圧トリガーとの違いとメリット
- 看護師が押さえるべき観察ポイント
が分かりますよ♪
結論👉
フロートリガーとは、患者さんの吸気努力を「流量の変化」で感知して呼吸器が作動する仕組みです。
感度設定を適切に行うことで、呼吸の同期を取りやすくし、患者さんの負担を軽減できます。
この記事では、フロートリガーの意味・仕組み・看護の注意点を、図や例を交えながらやさしく解説します😊
フロートリガーって何?
人工呼吸器では、患者さんが「息を吸いたい」と思ったタイミングに合わせて、呼吸器が空気を送り出す必要があります。
このきっかけを検知する仕組みを「トリガー」といいます。
トリガーの種類には主に次の2つがあります👇
| トリガーの種類 | 検知の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| プレッシャートリガー(Pressure Trigger) | 気道内圧が下がったことを検知して作動 | 従来から使われる方法。感度設定が難しい場合もある。 |
| フロートリガー(Flow Trigger) | 呼吸回路内の空気の流れ(流量)が変化したことを検知して作動 | より自然なタイミングで患者さんの呼吸に合わせられる。 |
つまり、フロートリガーは「流れ(Flow)」の変化で吸気を検出する方式なんです。
フロートリガーの仕組みをやさしく説明
人工呼吸器では、呼吸回路内に常に少量の空気(バイアスフロー)が流れています。
これは患者さんが吸気を始めたとき、その流れの一部が患者側に引き込まれるため、回路内で「流量差」が生じるからです。

この流量差を人工呼吸器が検出し、「吸気が始まった」と判断して空気を送り出します。
これがフロートリガーの基本的な仕組みです。
プレッシャートリガーとの違い
フロートリガーとプレッシャートリガーの大きな違いは、“何を検知して作動するか”です。
- プレッシャートリガー:圧力の変化を検知(気道内圧の低下)
- フロートリガー:流れの変化を検知(流量差)
フロートリガーのほうが、患者さんの吸気努力に対して敏感に反応できるため、より自然な呼吸に近づけやすいメリットがあります。

設定が合っていないと逆に負担になることもあるから、仕組みをしっかり理解しておきましょうね😊
看護視点で押さえておきたいポイント
フロートリガーは「患者さんの吸気努力」をいかに正しく拾えるかがカギです。
ここでは、看護師が臨床で迷いやすい…ではなく、実際の設定の目安・同期不全の見つけ方・すぐにできる観察とケアをやさしく整理します。
感度設定(流量)の目安と合わせ方
多くの機種では感度を「L/分」で設定します。
一般的な開始目安は1〜3 L/分です。
低すぎると吸気努力を拾えず(ミストリガー)、高すぎるとわずかな揺れやリークで誤作動(オートトリガー)が起こります。
| 状況 | 観察されやすいサイン | 設定を合わせる考え方 |
|---|---|---|
| 感度が低すぎる | 呼吸器の換気回数が少ない/患者の努力(肩や前頸筋)が強い/無効努力 | 0.5〜1 L/分ずつ感度を上げる(値を小さくする機種もあり)→努力が軽くなるか確認 |
| 感度が高すぎる | 自発なしでも作動/回路が揺れると作動/RRが不自然に高い | 0.5〜1 L/分ずつ感度を下げる+リークや水溜まりをチェック |
| NIV(マスク) | 口元やマスク縁からの漏れ/アラーム多発 | フィット調整・姿勢調整を先に行い、その後微調整 |
- 実践のコツ:はじめは2 L/分前後→患者の努力と波形を見ながら微調整
- 微調整ごとに呼吸困難感・RR・波形の変化を観察
- 設定変更は必ず記録(時刻・値・患者の反応)
同期不全(アシンクロニー)のサインと対処
フロートリガーでも同期不全は起こります。
見落としやすいのはオートトリガーとミストリガー(無効努力)です。
| タイプ | 臨床でのサイン | まずできる対応(看護) |
|---|---|---|
| オートトリガー | 患者努力なしに換気回数↑/回路が揺れると作動/呼気流が0に戻る前に次の吸気 | 回路リーク・水溜まり・配管接続を確認/感度をやや下げる方向で微調整を検討・報告 |
| ミストリガー(無効努力) | 呼吸困難感・肩で息/胸腹部の努力が強いのに換気が立ち上がらない | 感度をやや上げる方向で微調整/吸引・体位・鎮静の過不足を評価し報告 |
| ダブルトリガー | 吸気が連続して2回入る/Vt過大や不快感 | 設定(吸気時間・サポート量)の整合を医師・CEへ連絡/刺激要因の軽減 |
- 波形の観察:フロー波形が0に戻るか・努力に同期して立ち上がるかを見る
- リーク源:ETTカフ圧・マスクフィット・回路接続・加温加湿器の水溜まり
- 「設定の前に原因除去」→それでも合わない時に微調整を検討・報告
観察・ケアでできること
看護師がすぐに取り組めるポイントをチェックリストにしました。
安全・快適・同期の3軸で見ていきましょう。
- 安全:アラーム履歴の確認(高/低圧・高/低分時換気量・リーク)
- 安全:回路水抜き・配管の固定(揺れによる誤作動を減らす)
- 快適:表情・胸郭運動・使用筋(胸鎖乳突筋など)・不穏の有無
- 同期:フロー/圧波形の“立ち上がり”と“戻り”を観察
- 同期:吸引前後で呼吸仕事量やRRの変化を確認
- 連携:変更時は値・時刻・反応を記録し、医師・CEへ共有

それでも合わない時に0.5〜1 L/分刻みで微調整、変化は必ず記録して共有しよう😊
臨床現場での活用とトラブル対応
ここでは、フロートリガーが実際にどのような場面で活用されるのか、そして設定や環境の影響で起こりやすいトラブルとその対処法についてまとめます。
看護師が理解しておくと、よりスムーズに患者さんの呼吸に寄り添うケアができますよ😊
自発呼吸アシストモードでの活用例
フロートリガーは、自発呼吸を支援するモード(PSV、SIMVなど)で多く使用されます。
患者さんの努力呼吸に合わせて呼吸器が作動することで、呼吸仕事量を減らし、快適性を高めることができます。
たとえば、人工呼吸器離脱(ウィーニング)期の患者さんでは、自発呼吸を維持しながらサポートすることが重要です。
その際、フロートリガーが適切に作動していると、“息を吸いたい”という患者さんのタイミングにぴったり合わせた換気が行われます。
- PSV(Pressure Support Ventilation):努力呼吸に反応してサポート圧を供給
- SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation):自発呼吸を同期的に支援
- CPAP(Continuous Positive Airway Pressure):自発呼吸の維持と快適性向上
このように、フロートリガーは患者さんの「吸いたい」を感じ取ることで、呼吸の自然さを保つために欠かせない機能です。
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リーク・回路トラブル時の影響と看護師対応
一方で、フロートリガーは敏感に反応するため、リーク(空気漏れ)や回路の問題で誤作動を起こすことがあります。
以下のような症状が見られたら、設定変更の前に環境要因を確認しましょう。
| トラブル原因 | 観察されるサイン | 看護師ができる初期対応 |
|---|---|---|
| 回路の接続不良 | 異常なアラーム/換気量が安定しない | 回路・接続部・加湿器の接続状態を確認し、しっかり装着 |
| 加温加湿器の水たまり | 揺れるとトリガー作動/波形の乱れ | 水抜きを実施して誤作動を防ぐ |
| マスクリーク(NIV時) | 呼吸器が勝手に作動/呼吸回数の急増 | マスクのフィット確認/姿勢・ストラップを再調整 |
| 吸引や体位変換直後 | 一時的な同期不全/患者の呼吸困難感 | 吸引後の波形と患者の表情を確認/必要に応じ再設定を依頼 |
- 設定を変える前に「環境チェック」を行う
- 波形のズレやアラームの頻度を観察し、原因を推定する
- 改善しない場合は医師・臨床工学技士(CE)に報告
患者の負担を減らすための工夫
フロートリガーは「吸気を助ける」だけでなく、設定やケア次第で患者さんの快適性を大きく変えることができます。
看護師が意識してできる工夫は次の通りです。
- 患者の体位を整え、呼吸しやすい姿勢を保つ(半座位など)
- 吸引やケアのタイミングを患者の呼吸に合わせる
- 不安や緊張をやわらげ、呼吸リズムを整える声かけを行う
- 呼吸器設定変更後は表情・SpO₂・波形を再評価

そして何より大切なのは、患者さんの“呼吸のしやすさ”を一緒に感じ取ることです✨
✅まとめ|この記事で学べるフロートリガー

この記事のまとめポイント
この記事での再重要部位👉
- フロートリガーとは「流量の変化」で吸気を感知するトリガー方式
- 感度設定は1〜3L/分が目安。高すぎても低すぎてもトラブルの原因になる
- 誤作動時は設定変更の前にリークや水溜まりなど環境要因をチェック
- 波形・表情・呼吸努力を総合的に観察し、同期のズレを見逃さない

どんなに正しい数値でも、患者さんが苦しそうなら再確認を。
呼吸のリズムと波形を一緒に感じ取る力が、現場での強みになりますよ😊
フロートリガーを理解すると、「呼吸器が患者さんの呼吸をどう支えているのか」が見えてきます。
これをきっかけに、PSVやCPAPなど他のモードの理解もどんどん深まっていきますよ🩺🌸

