
「褥瘡予防のために体位変換は何時間おきにすべき?」「30度側臥位って正確にはどうやるの?」「限られた時間と人手で効果的に褥瘡を予防したい…」
そう思っている看護師の方も多いのではないでしょうか。褥瘡予防は基本的なケアですが、実践となると悩みどころも多いですよね 💭
この記事では
- 褥瘡発生のメカニズムと予防の基本原則
- 効果的な体位変換の正確なタイミングと方法
- 30度側臥位の写真付き実践ガイド
- 体圧分散寝具の選び方と活用法
- 在宅でも実践できる効率的なケア技術
が分かりますよ♪
実は褥瘡予防には「体圧分散」「定期的な体位変換」「スキンケア」「栄養管理」「早期発見」の5つのケアを組み合わせることが重要なんです!✨
この記事では、エビデンスに基づいた褥瘡予防の具体的方法から、忙しい臨床現場でも実践できる時短テクニックまで、イラストを交えて詳しく解説していきます。
ベテラン看護師の経験も踏まえた実践的な内容ですので、ぜひ最後までご覧ください 📝
褥瘡予防の第一歩は適切なアセスメントから始まります。
患者さん一人ひとりのリスクを正確に評価し、個別性のある予防計画を立てることが重要です。
ここでは、看護師として知っておきたい褥瘡リスク評価スケールの活用法から、ハイリスク患者の早期発見、効果的な予防計画の立案まで、実践的なポイントをご紹介します。
日々の忙しい業務の中でも確実に褥瘡予防ができるよう、アセスメントの極意をマスターしましょう!✨
褥瘡予防の第一歩は適切なリスク評価から。
日本で主に使用されている3つの評価スケールには、それぞれ特徴があります。
患者さんの状態や施設の特性に合わせて、最適なツールを選びましょう。
評価スケール | 主な特徴 | 評価項目数 | 適している場面 |
---|---|---|---|
OHスケール | 日本人向けに開発された簡便なツール | 7項目 | 一般病棟、在宅ケア |
ブレーデンスケール | 国際的に最も使用されている | 6項目 | 急性期、回復期、慢性期 |
DESIGN-R | 褥瘡の状態評価に特化 | 6項目 | 既に褥瘡がある患者の評価 |
OHスケールは日本の医療環境に合わせて開発された評価ツールで、特に高齢者のアセスメントに適しています。
一方、ブレーデンスケールは国際的な比較研究が豊富で、エビデンスレベルが高いのが特徴です。
DESIGN-Rは褥瘡の深さや大きさなど、既に発生した褥瘡の評価に役立ちます。🔍
それぞれのスケールには強みと弱みがあります。臨床現場での活用ポイントを押さえましょう。
- 強み:日本人の体型や生活習慣を考慮している、簡便で使いやすい
- 弱み:国際的な研究データが少ない
- 活用ポイント:日本の高齢者施設や在宅ケアでの使用に適しています
- 強み:豊富な研究データ、国際比較が可能、予測精度が高い
- 弱み:日本人の特性への適合性にやや課題がある
- 活用ポイント:急性期病院や国際的な研究参加施設に適しています
リハビリくん.より画像引用
- 強み:褥瘡の状態を詳細に評価できる、治療効果の判定に有用
- 弱み:予防的評価には不向き
- 活用ポイント:褥瘡ケアチームでの評価や治療効果の判定に活用しましょう
マルホより画像引用
どのスケールを選ぶにしても、定期的かつ継続的な評価が重要です。
患者さんの状態変化に応じて、再評価のタイミングを逃さないようにしましょう!⏰
褥瘡リスク評価スケールだけでなく、日々の観察で見逃してはならない臨床所見があります。
これらのサインを早期に発見することで、褥瘡発生を未然に防ぐことができます👀
- 発赤が2時間以上消失しない(非退色性紅斑)
- 皮膚の温感や冷感の変化
- 浮腫や硬結の出現
- 皮膚の湿潤状態の変化
- 急激な体重減少(1週間で3%以上)
- 食事摂取量の低下
- 発熱や感染症の徴候
- 活動性の低下
特に注意が必要なのは、骨突出部の発赤です。
指で軽く押して白くなり、指を離すとすぐに赤くなる場合は「退色性紅斑」で、まだ可逆的な状態です。
しかし、押しても白くならない「非退色性紅斑」は、すでに組織損傷が始まっている証拠です。
この違いを見分ける「ブランチングテスト」は、毎日のケアに取り入れるべき重要な観察技術です!💡
ディアケアより画像引用
リスク評価ができたら、次は個別の予防計画を立案しましょう。
効果的な計画立案のステップをご紹介します。
: リスク要因の特定
患者さん固有のリスク要因を明確にします。
内的要因(栄養状態、皮膚の状態、基礎疾患など)と外的要因(圧迫、ずれ、摩擦、湿潤など)の両面から評価しましょう。
: 優先順位の決定
特定したリスク要因の中から、優先的に対応すべき項目を決定します。
例えば、栄養状態不良と失禁がある場合、どちらを先に改善すべきかを判断します。
: 具体的な介入方法の選択
- 体圧分散:適切なマットレスの選択、ポジショニング方法
- 体位変換:頻度、方法、使用する補助具
- スキンケア:洗浄方法、保湿剤の選択
- 栄養サポート:必要栄養素、摂取方法
: 評価指標と頻度の設定
計画の効果を評価する指標と、評価する頻度を明確にします。
例えば「1日1回の体位変換後に発赤の有無を確認する」などです。
: 多職種との連携計画
リハビリスタッフ、管理栄養士、医師など、多職種と連携するポイントを計画に含めましょう。
これらのステップを踏むことで、患者さん一人ひとりに合った効果的な褥瘡予防計画が立案できます。
計画は固定せず、患者さんの状態変化に応じて柔軟に修正していくことが大切です!🌈
褥瘡予防の取り組みを適切に記録することは、ケアの継続性を保ち、法的にも重要です。
効果的な記録のポイントをマスターしましょう📝
- 使用した評価スケールの種類と点数
- 皮膚の状態(特に骨突出部の詳細な観察結果)
- 実施した予防ケアの内容と患者の反応
- 使用している体圧分散用具の種類と設定
- S(主観的情報):「長時間同じ姿勢でいると痛みがある」など患者の訴え
- O(客観的情報):「仙骨部に2cm×3cmの発赤あり、ブランチングテスト陽性」など観察結果
- A(アセスメント):「ブレーデンスケール15点、褥瘡発生リスク中等度」など評価結果
- P(計画):「2時間ごとの体位変換、エアマットレス使用継続」など計画内容
記録の際は、他のスタッフが読んでも具体的なケア方法がイメージできるよう、抽象的な表現は避け、具体的に記載することが重要です。
また、予防ケアの効果を継続的に評価し、その結果も記録に残しましょう。
特に注意したいのは、「リスク評価を行った」だけでなく、「その評価に基づいてどのようなケアを選択したか」「そのケアによって患者の状態がどう変化したか」まで記録することです。
これにより、ケアの根拠と効果が明確になり、チーム全体での質の高い褥瘡予防につながります!✨
褥瘡予防は看護ケアの基本でありながら、常に最新のエビデンスに基づいた実践が求められる分野です。
日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン第5版」(2025年最新版)に準拠した科学的根拠のある予防法を知ることで、より効果的なケアが提供できます。
ここでは、臨床現場ですぐに活用できる5つの基本原則を解説します。
忙しい業務の中でも確実に実践できるテクニックをマスターして、患者さんの褥瘡リスクを効果的に減らしていきましょう!🌟
褥瘡予防の基本中の基本は、体圧管理です。
骨突出部への持続的な圧迫を避けることが最も重要なポイントとなります。
体圧分散寝具は、患者さんの褥瘡発生リスクに応じて適切に選択することが重要です。
特に自力で体位変換ができない患者さんには、圧切替型エアマットレスの使用が推奨されています。
リスクレベル | 推奨される体圧分散寝具 | 特徴 |
---|---|---|
低リスク | 静的マットレス(ウレタンフォーム等) | 沈み込みによる体圧分散 |
中リスク | 粘弾性フォームマットレス、上敷二層式エアマットレス | 体位変換間隔を4時間まで延長可能 |
高リスク | 圧切替型エアマットレス、多層式エアマットレス | 自動的に接触部位を変える |
特に日本の高齢者は、筋力低下や皮膚のたるみ、骨の突出があるため、二層式エアマットレスなどの多層式エアマットレスが勧められています。
体圧分散を効果的に行うためには、単にマットレスを選ぶだけでなく、適切なポジショニングも重要です。
特に「30度側臥位」は、骨突出がない広い面積の殿筋で体重を受けることができるため、効果的な体位です。
クッションなどを活用して、できるだけ広い接触面積で姿勢を保てるようにしましょう。
体圧管理は一時的なものではなく、継続的に行うことが大切です。
定期的な体位変換と組み合わせることで、より効果的な予防が可能になります!👍
体位変換は褥瘡予防の基本ですが、その頻度や方法については最新のエビデンスに基づいた実践が重要です。
基本的に体位変換は2時間を超えない範囲で行うことが推奨されています(推奨度C1)。
ただし、使用している体圧分散寝具の種類によって調整が可能です。
- 一般的なマットレス:2時間ごと
- 粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレス:4時間まで延長可能
患者さんの状態や介護者の負担、マットレスの状態に応じて適宜調整することも必要です。
体位変換を行う際は、ベッドからの転落や摩擦・ずれをなくすため、できれば2人で行うことが理想的です。
1人で行う場合は、体の部分を少しずつ移動させる方法や、スライディングシートなどの回転しやすいシートを利用する方法が効果的です。
また、体位変換後は寝衣のしわによる圧迫をなくすよう整えることも忘れないでください。
統一したケアが行えるように「体位変換スケジュール」を活用することも効果的な方法です。
画像・表は日本褥瘡学会より引用
体位変換は褥瘡予防だけでなく、内臓機能を正常に保ち、肺炎や血栓症の予防、関節拘縮や変形予防にも役立つと言われています5。多くのメリットがある大切なケアですね!🔄
スキンケアは褥瘡予防の重要な柱の一つです。特に皮膚の湿潤状態の管理と保護が重要なポイントとなります。
褥瘡になりやすい皮膚の状態として、尿や便失禁による湿潤(皮膚のふやけ)があります。
排泄物が付着した状態が長時間続くと、皮膚への刺激が加わり皮膚トラブルから褥瘡発生につながりやすくなります。
湿った皮膚は摩擦の力が強くなり、圧迫やずれが加わると容易に褥瘡ができやすくなるため、「湿ったまま、汚れたままにしない」ことが大切です。
-
:
皮膚をゴシゴシ擦らないように優しく丁寧に洗います。
石鹸を使う場合には、よく石鹸を泡立て、十分に洗い流しましょう。 -
:
排泄物から皮膚を守るためには、皮膚の洗浄後に、肛門・外陰部から周囲皮膚へ皮膚保護のためのクリーム等の塗布を行うことが推奨されています。 -
:
特に高齢者の皮膚は弱く、骨の突出した部位は皮膚の摩擦を強く受けやすい状態になっています。そのため、予防のためのテープ(ポリウレタンフィルムドレッシング材)やすべり機能つきドレッシング材、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコンドレッシング材を貼ることが推奨されています。 -
:
日頃より皮膚が乾燥しないよう保湿クリームなどを塗布することも大切です。
スキンケアは日々の基本ケアの中に組み込むことで、効率的に実施できます。
特に清潔ケアの際に意識して観察と保湿を行うことがポイントです!✨
褥瘡予防において栄養管理は非常に重要な要素です。
低栄養状態は褥瘡発生リスクを高めるため、栄養サポートチーム(NST)と連携した効果的な栄養管理が求められます。
褥瘡予防の栄養管理の基本は、低栄養の回避・改善です。低栄養状態を確認する指標には、以下のようなものがあります:
- 血清アルブミン値
- 体重減少率
- 喫食率(食事摂取量)
- 主観的包括的栄養評価(SGA)
- 高齢者にはMNA-SF(mini nutritional assessment-Short Form)
- CONUT(controlling nutritional status)
これらの栄養評価ツールを活用することで、効果的な栄養管理が可能になります。
低栄養の患者さんに対する栄養管理の方法としては、疾患を考慮したうえで、高エネルギー、高蛋白質のサプリメントによる補給を行うことが推奨されています。
栄養摂取ルートの選択も重要です:
- 経口摂取が基本
- 口からの栄養補給が難しい場合は経腸栄養
- 経腸栄養も困難な場合は静脈栄養
特に高カロリー、高タンパク質、高ビタミンの食事は、褥瘡の予防の観点からもお勧めです。
食事がなかなかすすまない場合には栄養補助食品などを併用するとよいでしょう。
NSTと連携することで、患者さん個々の状態に合わせた適切な栄養サポートが可能になります。
定期的なカンファレンスなどで情報共有を行うことが大切です!🥄
褥瘡予防は一度実施して終わりではなく、継続的な評価と改善が必要です。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことで、より効果的な予防ケアが実現できます。
褥瘡予防ケアを行う際は、患者さんの全身状態を観察しリスクを評価してから、症状に合わせたケアを行っていく必要があります。
褥瘡の深度や重症度をアセスメントするスケールとして、米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)の褥瘡分類や褥瘡経過評価票(DESIGN-R)などを活用しましょう。
まずは体を見ることが大事です。
着替えや入浴・体拭き、体の向きを変える時などに観察します。
特に骨突出部の皮膚状態を注意深く観察し、発赤や変化がないかチェックすることが重要です。
実施したケアの効果を定期的に評価し、必要に応じてケア方法を見直します。
例えば、体位変換の頻度や方法、使用している体圧分散寝具の種類、スキンケア方法などを患者さんの状態に合わせて調整していきましょう。
褥瘡予防は多職種で取り組むことが重要です。
看護師だけでなく、医師、理学療法士、栄養士など様々な職種と情報を共有し、チームで予防に取り組むことで効果が高まります。
実施したケアと評価結果を適切に記録することで、ケアの継続性が保たれます。
また、記録を分析することで、より効果的な予防方法の発見につながることもあります。
継続的な評価と改善を行うことで、褥瘡予防の質が向上し、患者さんのQOLの維持・向上につながります。
日々の小さな改善の積み重ねが大きな成果を生み出します!📈

褥瘡予防の要となる体位変換ですが、「2時間ごと」という常識が見直されつつあります。
2025年最新の褥瘡予防・管理ガイドライン第5版では、より科学的根拠に基づいた体位変換の頻度や方法が推奨されています。
患者さんの状態や使用している体圧分散寝具に応じた個別化アプローチが重要視されるようになりました。
また、看護師の業務負担軽減や患者さんの睡眠の質確保といった視点も取り入れた実践的なプロトコルが求められています。
ここでは、最新エビデンスに基づく体位変換の実践ポイントをご紹介します!💫
これまで「2時間ごとの体位変換」が常識とされてきましたが、最新の褥瘡予防・管理ガイドライン第5版では、「4時間をめどとすること」が明示されています。
この変更には科学的根拠があり、画一的なケアではなく個別化アプローチが重要とされています🔍
体圧分散寝具の種類によって、推奨される体位変換の間隔が異なります。
最新のガイドラインでは以下のような推奨がされています:
マットレスの種類 | 推奨体位変換間隔 | 根拠レベル |
---|---|---|
一般的なマットレス | 2時間ごと | 従来の目安 |
粘弾性フォームマットレス | 4時間を超えない範囲 | 推奨度C1 |
上敷二層式エアマットレス | 4時間を超えない範囲 | 推奨度C1 |
スモールチェンジシステム搭載型エアマットレス | 夜間は6時間ごとも可能 | 研究報告あり |
特に注目すべきは、高齢者に対する褥瘡予防において「体圧分散マットレスを使用したうえでの4時間をこえない体位変換間隔」が推奨度2Bで提案されていることです。
これは、従来の2時間ごとという目安に明確な根拠がないことが明らかになったためです。
また、最新の研究では、スモールチェンジシステム搭載型エアマットレスを使用することで、夜間の体位変換は6時間ごとにしても褥瘡予防効果が得られるという新たな知見も報告されています。
体位変換の頻度は、患者さんの個別状態に応じて調整することが重要です。
以下のポイントを考慮して頻度を決定しましょう:
- :皮膚の状態、栄養状態、基礎疾患などから組織の耐久性を評価します
- :自力での体動が可能かどうかにより調整が必要です
- :発熱や低血圧など全身状態が不安定な場合は、より頻回な観察と体位変換が必要です
- :骨突出部の発赤の有無や持続時間をチェックし、発赤が2時間以上消失しない場合は体位変換間隔を短くします
日本褥瘡学会の学術教育委員会では「画一的に2時間ごとに体位変換を計画するのではなく、他のリスクの有無により体位変換間隔を短縮するなど個別に看護計画を立案することが推奨される」としています。
まずは目の前の患者さんの体位変換の間隔が、どれくらいなら適切か、「2時間ごと」でよいのか、疑問をもつことからはじめましょう👀
効率的な体位変換スケジュールの管理は、看護業務の負担軽減と褥瘡予防の質向上につながります。
実践的なスケジュール管理のポイントをご紹介します💡
統一したケアが行えるように「体位変換スケジュール」を使用することが効果的です。
スケジュール表には以下の情報を含めるとよいでしょう:
- 体位変換の時間帯
- 実施する体位(仰臥位、左30度側臥位、右30度側臥位など)
- 使用するクッションの位置
- 観察すべきポイント
- 実施者のサイン欄
体位変換は患者さんと介護者の生活リズムに合わせて計画すると実施しやすくなります。
特に在宅ケアでは、家族の生活リズムを考慮したスケジュールが重要です。
リハビリテーション時間や検査、処置などの時間を考慮して、多職種で体位変換スケジュールを共有することで、効率的なケア提供が可能になります。
従来の大きな体位変換(仰臥位から側臥位など)だけでなく、「スモールチェンジ」を取り入れることで、実施する側の負担軽減と患者さんの安楽を両立できます。
スモールチェンジとは、身体全体を大きく動かすのではなく、部分的に小さな姿勢変更を行う方法です。
例えば、膝を立てた状態から膝を伸ばして頭の位置を少し傾ける程度の小さな変化でも効果があります。
体位変換スケジュールを立案する際は、「必ず〇時間ごと」という固定概念にとらわれず、患者さんの状態や使用している体圧分散寝具の種類、スタッフの配置状況なども考慮して柔軟に対応することが大切です✨
夜間の体位変換は、患者さんの睡眠を妨げる可能性があり、QOL低下につながることがあります。
最新の研究では、睡眠を妨げにくい体位変換のタイミングや方法が明らかになってきました。
研究によると、深睡眠時に体位変換を行うと、睡眠への影響が少ないことが明らかになっています。
浅睡眠と深睡眠のタイミングで体位変換を行った場合の比較では、深睡眠中の体位変換の方が睡眠を妨げにくいという結果が出ています。
特に夜間の体位変換は、介護者の就寝前、起床時などに合わせて行うと負担を軽減できます。
最新の研究では、スモールチェンジシステム搭載型エアマットレスを使用することで、夜間のみ6時間ごとの体位変換でも褥瘡発生率が上昇しないことが示されています。
スモールチェンジシステム搭載型エアマットレス導入による褥瘡予防効果; 長期療養型施設におけるパイロットスタディより引用
睡眠中の小さな姿勢変更は、患者さんの睡眠を妨げない方法の1つとして活用可能です。
膝を立てた状態から膝を伸ばして頭の位置を少し傾ける程度の小さな変化でも、圧迫部位の変化につながります。
体位変換時の環境調整も重要です:
- 照明は必要最小限にする
- 声かけは優しく小さな声で行う
- 寝具の調整はそっと行う
- 体位変換後の安楽な姿勢保持を素早く行う
夜間の体位変換は、患者さんの睡眠の質と褥瘡予防の両立が求められる難しいケアです。
個々の患者さんの睡眠パターンを観察し、最も睡眠を妨げにくいタイミングでの体位変換を心がけましょう。
体圧分散寝具の適切な選択と組み合わせることで、体位変換の頻度を減らし、睡眠の質を確保することも可能です💤
体位変換は看護師の腰痛発生リスクが高い看護技術の一つです。
患者さんの安全を確保しながら、看護師自身の身体も守る体位変換テクニックを身につけることが重要です。
- 膝を曲げ、患者さんの体と自分の重心の位置を近づける
- 足や腰、体幹などの大きな筋肉を使用する
- 背筋を伸ばし、腰を落とした安定した姿勢をとる
仰臥位から側臥位への体位変換では、「上半身と下半身を同時に動かす」ことが最も重要です。
別々に動かそうとすると、体が安定せず余計な力が必要となります4。
具体的な手順:
- 患者さんに胸の上で腕を組んでもらう
- 踵がお尻に付く程度まで膝を曲げてもらう
- 片方の手で患者さんの肩、反対の手で腰を支える
- 腰、肩の順で向きを変える
- スライディングシートなどの回転しやすいシートを利用する
- マルチグローブや代用としてビニール袋を使用して摩擦を減らす
- 体位変換用のリフトやターナーなどの福祉用具を活用する
体格の大きい患者さんの体位変換は、1人で行うと看護師の腰に大きな負担がかかります。
可能であれば2人で介助することで、患者さんの安全確保と看護師の腰痛予防の両方につながります9。
患者さんができる範囲で体位変換に参加してもらうことで、看護師の負担軽減につながります。
例えば、ベッド柵を持ってもらう、腕を組んでもらうなど、患者さんの残存機能を活かした協力を得ることが大切です。
体位変換は日常的に行う看護技術だからこそ、正しい姿勢と効率的な方法を身につけることが重要です。
自分の体を守りながら、患者さんにも安全で快適な体位変換を提供しましょう💪
褥瘡予防の基本となる30度側臥位。「なんとなく」で行っていませんか?
実は角度の誤差や不適切なポジショニングは、褥瘡予防効果を大きく低下させます。
2025年の最新研究によると、看護師が行う30度側臥位の実測角度は平均18度と大幅に低いことが明らかになっています。
ここでは解剖学的根拠に基づいた30度側臥位の正確な実践方法から、効果を高めるポジショニンググッズ、よくある誤りまで、臨床で即実践できるテクニックをご紹介します。
褥瘡予防の効果を最大化する30度側臥位をマスターしましょう!✨
30度側臥位が褥瘡予防に効果的とされる最大の理由は、骨突出部への圧迫を避けながら、大きな接触面積で体圧を分散できる点にあります。
解剖学的に見ると、この体位の優れた特徴が明らかになります🔍
30度側臥位では、骨突出のない殿部の筋肉(大殿筋)で体重を支えることができます。
これにより、仙骨部や大転子部などの骨突出部への圧迫を避けることができるのです。
また、ベッドとの接触面積が広いため、一点に集中する圧力を分散させる効果もあります。
石川治, 田村敦志編集:創傷治療プラクティスより画像引用
日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン第4版」では、30度側臥位は推奨度Bとされています。
これは「行うよう勧められる」という比較的強い推奨を意味しています。
一方で、90度側臥位は仙骨部の圧迫は避けられますが、大転子部や腸骨部に体重がかかり、褥瘡発生リスクが高まるため、褥瘡予防には不向きです。
体位 | 褥瘡リスク | 圧がかかる主な部位 | 安定性 |
---|---|---|---|
30度側臥位 | 低い | 大殿筋(筋肉部分) | やや不安定 |
90度側臥位 | 高い | 大転子部、腸骨部 | 安定 |
仰臥位 | 中程度 | 仙骨部、踵部 | 安定 |
ただし、研究によっては30度側臥位が「人間の自然な姿勢や動きには反している」という指摘もあり、患者さんの状態に応じた個別化が必要です。
特に筋委縮が進んだ高齢者では、大殿筋の厚みが少なく、効果が減弱する可能性があることも念頭に置いておきましょう。
30度側臥位を正確に実践するためには、適切な手順と角度の確認が重要です。
多くの看護師は角度を低く見積もる傾向があり、指示された30度が実際には平均18度程度になっているという研究結果もあります。
正確な30度側臥位の実践方法を見ていきましょう。📏
-
患者さんを一度90度側臥位にします
-
背中に厚めのクッションを沿わせます
-
クッションを体の下にしっかり入れて、体を仰臥位方向に戻します
-
これにより約30度の傾きが得られます
-
体の左下(または右下)に圧力がかかっていないか確認
-
特におしりと肩の圧を抜くことが重要
-
上の足を少し曲げると安定感が増します
角度計を使って実際の角度を確認する習慣をつけると、正確な30度側臥位の感覚が身につきます。
また、定期的に自分の設定した角度を測定し、フィードバックを得ることで、角度設定の精度が向上します。
マルホより画像引用
30度側臥位を安定させるためには、クッションやピローの配置が決め手となります。
効果的な配置位置をマスターしましょう🛏️
-
肩から臀部にかけて幅広いクッションを使用する
フランスベッドより画像引用
-
背中全体が均等に支えられるよう配置する
-
クッションは背部から臀部にかけて圧が分散するように配置
皮膚科専門医が伝授!医療従事者のための高齢者皮膚トラブル対策講座より画像引用
- 上側になる肩や腕の下に大きめのクッションを配置
- 屈曲させた足の間にクッションを入れる
- 下側の肘や外踝、腕の下に薄いクッションを入れる
- 上下肢の間にクッションを入れて圧迫を防止
安定感を高めるために「バンカー法」も効果的です。
これは反対側のマットレスの下に小枕やクッションを入れ、斜面によるずれや不安定感を解消する方法です。
特に体格の大きい患者さんや、不安定になりやすい患者さんに有効です。
最終的には、患者さんの体の下側に手を差し込み、圧迫が生じていないか確認することが必要です。
特に骨突出部の圧迫には注意しましょう。
30度側臥位では体圧分散と姿勢の安定性を両立させることが課題です。
以下のポイントを押さえて、効果的なポジショニングを実現しましょう。💫
-
荷重のかかる下側の肩、骨盤、大転子などの圧抜きを確実に行う
-
なるべく広い面で身体を支え、局所に圧がかからないようにする
-
体位変換後は必ず骨突出部の圧を確認する
ポジショニングハンドブックより画像引用
-
上半身と下半身のねじれを防止する(上半身が30度なら下半身も同じく30度に)
-
全身の姿勢の並び(アライメント)を整える
-
両側の耳や肩、上前腸骨棘を結ぶ線が平行になるよう調整する
体幹と下肢のねじれは不快感の原因になります。上半身を30度にするなら、下肢も30度に近い角度にすることが重要です。
例えば、左30度側臥位なら左下肢の下にもクッションを入れて30度を維持します。
最終的なチェックポイントとして、頭部では耳、上半身は肩、下半身は骨盤の左右を結ぶ線が平行になっているかを確認しましょう。
これにより全身のアライメントが整い、安定した30度側臥位が実現します。
褥瘡予防において体圧分散寝具の選択は非常に重要なポイントです。
2025年最新の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、「高仕様フォームマットレスや電動の体圧分散マットレスを使用することが最も強いエビデンスで推奨されている」とされています。
しかし、ただ高機能なマットレスを選べばいいというわけではなく、患者さんの状態や使用環境に合わせた適切な選択が必要です。
ここでは、エビデンスに基づいた体圧分散寝具の選択基準から、効果的な活用法、限られた資源の中での運用戦略まで、臨床で即実践できる内容をご紹介します!🌟
体圧分散寝具の選択は、患者さんの状態を総合的に評価して行うことが重要です。
日本褥瘡学会のガイドラインでは、自力体位変換能力、骨突出の有無、ギャッジアップの頻度などを考慮した選択アルゴリズムが示されています。
これに基づいて適切な寝具を選ぶことで、褥瘡予防効果を最大化できます。🧩
体圧分散寝具は大きく「静的マットレス」と「動的マットレス」に分けられます。
それぞれの特徴と適応を理解して選択しましょう。
- 特徴:素材の弾力性や形状によって体圧を分散
- 種類:ウレタンフォーム、ゲル、ハイブリッド型など
- 適応:自力で体位変換ができる患者さん、褥瘡リスクが低〜中程度の方
- メリット:価格が比較的安価、操作が不要、故障リスクが少ない
- デメリット:体圧分散効果は動的マットレスより劣る
- 特徴:空気圧の変化により経時的に接触部位を変える
- 種類:圧切替型エアマットレス(交換型/上敷型)、スモールチェンジ機能付きなど
- 適応:自力で体位変換ができない患者さん、褥瘡リスクが高い方
- メリット:高い体圧分散効果、長時間同じ部位への圧迫を避けられる
- デメリット:価格が高い、操作が必要、故障のリスクがある
最新のエビデンスによると、自力体位変換が困難な高齢者の褥瘡予防には「交換圧切替型/上敷圧切替型多層式エアマットレス」が推奨度1B(強く推奨)とされています。
特に日本人は骨突出が多い体型の方が多いため、二層式エアマットレスが効果的とされています。
患者さんの状態に応じた最適なマットレス選択の基準を表にまとめました。
患者の状態 | 推奨マットレス | 選択理由 |
---|---|---|
自力体位変換可能 | 静的マットレス(ウレタンフォーム) | 動きやすさを確保しつつ体圧分散 |
自力体位変換不可 | 動的マットレス(エアマットレス) | 経時的に接触部位を変えて褥瘡予防 |
骨突出あり | 二層式エアマットレス | 骨突出部の圧迫を効果的に軽減 |
ギャッジアップ45度以上 | 厚さ10cm以上のマットレス | 底付き防止と姿勢保持機能が必要 |
体重が重い方 | 耐荷重性の高いマットレス | 底付きを防止する |
発汗が多い方 | 通気性の良いマットレス | 湿潤による皮膚トラブルを防止 |
選択の際は、褥瘡リスクアセスメントツール(ブレーデンスケールやOHスケールなど)の結果も参考にしましょう。
例えば、ブレーデンスケールで14点以下、OHスケールで4点以上の場合は、より高機能な体圧分散寝具の使用が推奨されています。
褥瘡リスクのレベルに応じた適切なマットレスの選択と設定方法について解説します。
リスクレベルの評価には、褥瘡リスクアセスメントツールを活用しましょう。🔍
-
推奨マットレス:低・中機能静止型マットレス(ウレタンフォームなど)
-
設定方法:特別な設定は不要ですが、マットレスの硬さが患者さんに合っているか確認
-
体位変換:2時間ごとの体位変換を基本とする
-
推奨マットレス:高機能マットレス(粘弾性フォームマットレス、上敷二層式エアマットレスなど)
-
設定方法:エアマットレスの場合は患者の体重に合わせて空気圧を調整
-
体位変換:適切な体圧分散寝具使用下では4時間を超えない範囲で行ってもよい
-
推奨マットレス:コンピューター圧切替型マットレス(交換型/上敷型多層式エアマットレス)
-
設定方法:体重設定を正確に行い、「底突きの確認」を実施
-
体位変換:スモールチェンジシステム搭載型エアマットレスを使用することで、夜間は6時間ごとの体位変換も検討可能
エアマットレスを使用する際は、内圧設定が適切かどうか「底突き」の確認が重要です。
-
手の平を上にし、指をまっすぐにしてマットの下に差し込む(圧迫部位の真下)
-
人差し指か中指を曲げてみる
-
指が曲げられない場合は底突きしており、空気圧の調整が必要
マットレスの選択と設定は、褥瘡予防の基本です。
患者さんの状態変化に応じて定期的に再評価し、必要に応じて変更することも大切ですね!✨
体圧分散寝具を効果的に活用するためには、使用中の注意点と効果のモニタリングが欠かせません。
適切な管理と評価を行うことで、褥瘡予防効果を最大化しましょう。👀
- 伸縮性のないカバーやリネンを使用すると「ハンモック現象」が生じ、体圧分散効果が低下します
- 下シーツはしわなく、かつきつく張りすぎないように注意
- 通気性と伸縮性のあるカバーを選択しましょう
- 患者さんの体重に合わせた適切な内圧設定が重要
- 定期的に底突きの確認を行い、必要に応じて調整
- 気温の変化によりマットレスの硬さが変わることもあるので注意
- 2022年10月、体圧分散エアマットレス使用中に褥瘡が発生した事例が報告されています
- 特に初めて使用する場合や新規採用の製品は、取扱説明書を熟読しましょう
- 「使用しないでください」「同時に使用することは避けてください」などの注意事項を遵守
- ベッドとマットレスなど異なる用具を組み合わせる場合、それぞれ個別の操作が行われます
- 特にギャッジアップ時に不適切な状態にならないよう注意が必要
- 体圧測定器を使って骨突出部の体圧を測定し、マットレスの効果を客観的に評価
- 数値として評価することで、スタッフ間で共通理解を持つことができます
- 患者さん・家族への指導にも活用できます
- 骨突出部の発赤や皮膚の変化を定期的に観察
- 特に仰臥位では仙骨部・踵部、側臥位では大転子部・腸骨部などをチェック
- 発赤が2時間以上消失しない場合は、マットレスの変更や体位変換間隔の見直しを検討
- 患者さんの主観的な快適性も重要な評価指標
- 痛みや不快感がないか、睡眠の質は保たれているかを確認
- 患者さんの意見を取り入れながらマットレスの調整を行いましょう
体圧分散寝具は適切に管理することで初めて効果を発揮します。
日々のケアの中で継続的なモニタリングを行い、患者さんに最適な環境を提供しましょう!🌈
高機能な体圧分散寝具は高価なため、多くの医療機関では十分な数を確保することが難しい現状があります。
限られた資源の中で効果的に運用するための戦略を考えてみましょう💰
- 褥瘡ハイリスク患者を特定し、高機能マットレスを優先的に配置
- 定期的なリスク評価を行い、状態変化に応じて再配置
- 褥瘡予防委員会などで院内の褥瘡発生状況とマットレス使用状況を定期的に確認
- 新潟県立がんセンター新潟病院のように、院内褥瘡予防委員会でフローチャートを作成
- 統一した基準でマットレスを選択することで、適材適所の配置が可能に
- チーム内で選択に困らず、効率的な運用ができます
- マットレスを病棟ごとではなく中央で一括管理
- 必要な患者に必要なタイミングで提供できる体制を整備
- 使用状況の「見える化」で効率的な運用が可能に
- 高機能マットレスが不足する場合は、クッションや枕などを活用したポジショニング
- 体位変換の頻度を調整するなど、ケア方法との組み合わせで対応
- 在庫状況に応じた柔軟な対応策をあらかじめ検討しておく
- 必要に応じてレンタルシステムを活用
- 特に短期間の高リスク患者への対応に有効
- コスト管理と効果のバランスを考慮した運用計画を立てる
- スタッフへの教育を徹底し、適切な選択と使用方法を周知
- 体圧分散寝具の効果と限界について理解を深める
- 成功事例や効果的な使用法の情報共有を促進
不適切な体圧分散寝具の選択・使用は、褥瘡を悪化させるだけでなく、患者さんのリハビリテーションを妨げ、自立の遅延につながる可能性もあります。
限られた資源の中でも、患者さん一人ひとりに最適なケアを提供できるよう、チーム全体で取り組むことが大切です。
最後に、体圧分散寝具はあくまでも褥瘡予防の一つの手段であり、定期的な体位変換、スキンケア、栄養管理などの基本的なケアとの組み合わせが重要であることを忘れないようにしましょう!🌟
看護実践に役立つ!褥瘡予防のためのスキンケアと栄養管理プロトコル
褥瘡予防において、スキンケアと栄養管理は車の両輪のように重要です。
特に高齢者や寝たきりの患者さんでは、皮膚バリア機能の低下や低栄養状態が褥瘡発生リスクを高めます。
2025年最新のガイドラインに基づいた科学的根拠のあるスキンケア方法と、効果的な栄養管理プロトコルを実践することで、褥瘡予防効果を最大化できます。
ここでは、臨床現場ですぐに活用できる具体的な方法をご紹介します。日々の看護ケアに取り入れて、患者さんの皮膚トラブルを未然に防ぎましょう!🌟
皮膚バリア機能を維持する科学的スキンケア手順🧴
褥瘡予防の基本となるスキンケアは、「洗浄」「保湿」「保護」の3ステップが基本です。
皮膚の生理機能を良好に維持・向上させるためには、科学的根拠に基づいたケアが重要です。
特に皮膚バリア機能の維持は褥瘡予防の第一歩となります。💦
スキンケアの基本3ステップ
- 洗浄:皮膚から刺激物、異物、感染源などを取り除く
- 保湿:角質層の水分を保持する
- 保護:皮膚と刺激物を遮断し、物理的刺激を軽減する
皮膚バリア機能が低下すると、外部からの刺激に弱くなり、褥瘡発生リスクが高まります。
健康な皮膚は5つの生理機能(保湿機能、バリア機能、分泌機能、知覚機能、体温調節機能)を持っていますが、加齢や疾患によりこれらの機能が低下します。
スキンケアの目的は、低下した皮膚機能を補い、健康な皮膚状態に近づけることです。
特に褥瘡予防では、皮膚の清潔保持、外力の排除、栄養状態の保持、皮膚の浸軟・乾燥予防、浮腫の予防と保護が重要になります。
皮膚pH値を考慮した洗浄剤の選択
健康な皮膚表面のpHは4~6の弱酸性です。この弱酸性環境が皮膚の自浄作用やバリア機能を維持する上で重要な役割を果たしています。
洗浄剤選びでは、この皮膚pHを考慮することが大切です。🧼
洗浄剤選択のポイント
- 弱酸性の洗浄剤を選ぶ(皮膚のpH環境を維持するため)
- 泡タイプの洗浄剤を使用する(摩擦を減らすため)
- 皮膚の状態に合わせて洗浄剤を選択する
皮膚の状態 | 推奨される洗浄剤 | 特徴 |
---|---|---|
健康な皮膚 | 弱酸性の泡洗浄剤 | 皮膚の自浄作用を維持 |
脆弱な皮膚 | 皮膚保護成分配合の弱酸性洗浄剤 | 皮膚への刺激を軽減 |
真菌感染疑い | 硝酸ミコナゾール配合石鹸 | 抗真菌作用あり |
洗浄方法のコツ
- ゴシゴシ擦らず、優しく丁寧に洗う
- 石鹸を使う場合は十分に泡立て、しっかり洗い流す
- 洗浄後は水分を押し拭きして除去する(擦ると皮膚損傷のリスクあり)
洗浄剤は「皮膚の状態と汚れの程度」によって使い分けることが大切です。
特に褥瘡予防では、1日1回の弱酸性洗浄剤による泡洗浄が推奨されています。
エビデンスに基づく保湿剤の選択と塗布方法
保湿ケアは褥瘡予防の要です。
皮膚の乾燥は角質層のバリア機能を低下させ、外部刺激に弱くなります。
適切な保湿剤の選択と塗布方法で、皮膚の健康を維持しましょう。✨
保湿剤の種類と特徴
保湿剤タイプ | 特徴 | 適した使用場面 |
---|---|---|
軟膏タイプ | べたつきが強いが保湿効果が高い | 乾燥が強い部位 |
クリームタイプ | 中程度のべたつき、伸びが良い | 全身の保湿ケア |
ローションタイプ | べたつきが少なく、伸びが最も良い | 広範囲のケア、夏場 |
保湿剤の成分による分類
- 油性軟膏(白色ワセリン、プロペト軟膏など):皮膚表面に油の膜を作り、水分蒸発を防ぐ
- ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど):水分を保持し皮膚の乾燥を防ぐ(出血傾向のある患者には注意)
- 尿素配合軟膏(ウレパール、ケラチナミンなど):角層を若干溶かし、皮膚の水分量を増やす
- セラミド含有製品:角質細胞間脂質と同じ成分で、バリア機能を補強する
保湿剤塗布のポイント
- 入浴後、皮膚が潤っているうちに塗布すると効果的
- 薄く均一に塗り広げる(厚塗りは効果が低下する場合も)
- 皮膚の状態や季節に応じて使い分ける
- 失禁がある場合は白色ワセリンの長期使用に注意(浸軟の原因になる)
特に注目すべきは、長期の白色ワセリン使用による浸軟リスクです。
白色ワセリンは油の膜により余分な水分を放出できないため、失禁がある患者さんでは浸軟しやすくなります。
このような場合は、オイルなどの撥水性のある専用のスキンケア用品を使用することが重要です。
失禁関連皮膚炎(IAD)予防のための最新ケアプロトコル
失禁関連皮膚炎(IAD)は「尿または便への曝露に起因する皮膚損傷」と定義され、褥瘡発生の重要なリスク因子です。
特に便失禁は皮膚のpHを上昇させ、皮膚バリア機能を低下させるため、適切な予防ケアが必要です。🛡️
IADの予防・管理の基本
- 皮膚に付着した排泄物(便・尿)を除去し、皮膚を清潔に保つための「清拭・洗浄」
- 排泄物による皮膚生理機能への影響を正常化するための「保湿」
- 排泄物から皮膚を守るための「保護」
IAD予防には2つの側面からのアプローチが必要です:
- 皮膚の浸軟への予防的スキンケア
- 尿・便から皮膚を守るための失禁ケア
便の性状別IAD予防ケア
便の性状 | 推奨されるケア方法 |
---|---|
有形便 | 標準的スキンケア(洗浄・保湿)、エモリエント剤による保湿 |
軟便 | 標準的スキンケア + 皮膚保護 + 便の収集(軟便専用パッド検討) |
水様便 | 原因アセスメントと対応 + 軟便と同様のケア + 便失禁管理システム検討 |
IAD予防の実践ポイント
- 排泄物が皮膚に付着したらすぐに洗浄・清拭
- 洗浄後は皮膚を十分に乾燥させる
- 保湿剤を塗布し皮膚バリア機能を補強
- 撥水性皮膚保護剤や皮膚被膜材を使用して皮膚を保護
- 排泄物が付着する部分全体にしっかり保護剤を塗布
IAD予防において重要なのは「発赤が見られたときにはもう遅い」という認識です。
発赤が見られる時点で、すでに消化酵素や細菌が皮膚内部に侵入しており、内部で障害が進行しています。
そのため、予防的なスキンケアが非常に重要です。
特に注目すべきは、IAD対策の3原則:
- 排泄物に触れない
- 皮膚を浸軟(ふやけ)させない
- 皮膚への機械的刺激(拭き取り、おむつ内のずれなど)をかけない
これらを実践することで、IADを効果的に予防し、褥瘡発生リスクを低減できます。
褥瘡予防に必要な栄養素と臨床栄養評価の実際🍽️
褥瘡予防において栄養管理は非常に重要な要素です。
低栄養状態は褥瘡発生リスクを高めるだけでなく、発生した褥瘡の治癒も遅延させます。
適切な栄養評価と介入が褥瘡予防の鍵となります🥄
褥瘡予防に必要な主要栄養素
栄養素 | 役割 | 摂取目安 | 多く含まれる食品 |
---|---|---|---|
エネルギー | 低栄養状態の防止・改善 | 体重1kgあたり25~30kcal/日 | 穀類、芋類、砂糖 |
タンパク質 | 皮膚組織の耐久性維持 | 体重1kgあたり1.5~2.0g/日 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | 細胞の新生、創傷治癒促進 | 1日約15mg | 豚レバー、小松菜、ひじき |
ビタミンC | コラーゲン合成、抗酸化作用 | 1日約100mg | 柑橘類、キウイ、ブロッコリー |
銅・カルシウム | コラーゲン合成 | 銅1.3~2.5mg、Ca600mg/日 | 豚レバー、ココア、乳製品 |
ビタミンA | コラーゲン合成、上皮形成 | 1日約600μg | 豚レバー、うなぎ、緑黄色野菜 |
褥瘡予防の栄養管理の基本は、低栄養の回避・改善です。
体たんぱく質が減少すると、筋肉量が減り皮膚組織の耐久性の低下を招きます。
また、体たんぱく質には水分保持力があるため、減少すると褥瘡発生リスクが高まります。
栄養状態の評価には、血清アルブミン値、体重減少率、喫食率(食事摂取量)、主観的包括的栄養評価(SGA)などの指標を活用します。
血清アルブミン値の解釈と介入タイミング
血清アルブミン値は褥瘡リスク評価において重要な指標です。
低アルブミン血症は褥瘡発生の独立した危険因子であることが研究で示されています🔬
血清アルブミン値と褥瘡リスク
- 血清アルブミン値が3.5g/dL未満で褥瘡発生リスクが約5倍に上昇
- 血清アルブミン値が1.0g/dL低下すると褥瘡発生率が3倍になるとの報告も
- 自力体位変換不能かつ血清アルブミン3.5g/dL未満では、リスクが14倍に
血清アルブミン値による介入タイミング
血清アルブミン値 | リスク評価 | 推奨される介入 |
---|---|---|
3.5g/dL以上 | 正常範囲 | 通常の栄養管理を継続 |
3.0~3.5g/dL | 軽度低栄養 | 食事内容の見直し、栄養補助食品の検討 |
2.5~3.0g/dL | 中等度低栄養 | 積極的な栄養介入、高エネルギー・高タンパク補給 |
2.5g/dL未満 | 重度低栄養 | 栄養サポートチーム介入、経腸栄養検討 |
血清アルブミンが低下すると、筋肉や皮膚などにプールされたアルブミンが血中に放出されます。
血清値の低下はアルブミンプールによる血中濃度の維持が困難となったことを意味し、末梢での酸素利用低下などをまねき、軟部組織の耐久性を低下させるため、速やかな回復が必要です。
アルブミン値の改善には、十分なエネルギーとタンパク質の摂取が必要です。
特に低栄養患者に対しては、疾患を考慮した上で、高エネルギー、高タンパク質のサプリメントによる補給が推奨されています(推奨度B)。
効果的な栄養補助食品の選択基準
褥瘡予防のための栄養補助食品は、単にエネルギーやタンパク質を補給するだけでなく、創傷治癒に関わる特定の栄養素を強化したものが効果的です。
患者さんの状態や嗜好に合わせて選択しましょう🍯
栄養補助食品選択のポイント
- 患者の栄養状態と必要栄養素を評価
- 摂取しやすい形態(ゼリー、飲料など)を選択
- 褥瘡予防に重要な栄養素が強化されているか確認
- 患者の嗜好や摂取能力に合わせる
褥瘡予防に効果的な栄養補助食品の特徴
強化栄養素 | 効果 | 推奨される患者 |
---|---|---|
アルギニン | タンパク質・コラーゲン合成促進、免疫細胞賦活化 | 低栄養状態の患者 |
亜鉛 | 核酸・体タンパク合成、創傷修復促進 | 創傷治癒遅延リスクのある患者 |
ビタミンC | コラーゲン合成に必須、抗酸化作用 | 高齢者、低栄養患者 |
コラーゲンペプチド | 線維芽細胞刺激、コラーゲン合成促進 | 褥瘡リスクの高い高齢者 |
日本静脈経腸栄養学会のガイドラインでは、「適切な栄養管理を実施したうえで、アルギニン、ビタミンC、亜鉛などを強化した栄養補助食品を付加する栄養療法は、褥瘡治療の一つの手段として推奨される(推奨度BⅡ)」とされています。
特に亜鉛は肉芽形成や創部の再上皮化に関連するため、創傷治癒に重要な役割を果たします。
また、コラーゲンペプチドは創傷部位における線維芽細胞を直接刺激し、増殖を促進することが研究で示されています。
栄養補助食品の選択では、患者さんの嗜好も重要な要素です。
おいしく感じられ、継続して摂取できる製品を選ぶことで、長期的な栄養状態の改善につながります。
栄養サポートチームとの効果的な連携方法
褥瘡予防において、栄養サポートチーム(NST)との連携は非常に重要です。
NSTが介入して患者個々の栄養状態に関する適切な対応策を講じることで、褥瘡の予防や治癒促進だけでなく、入院期間の短縮にもつながります🤝
NSTとの連携ポイント
- 褥瘡リスクのある患者を早期に特定し、NSTに相談
- 定期的なカンファレンスで情報共有
- 栄養評価結果と褥瘡リスク評価を統合
- 共同で栄養介入計画を立案・実施
効果的な連携のための実践ステップ
ステップ | 看護師の役割 | NSTの役割 |
---|---|---|
スクリーニング | 褥瘡リスク評価、栄養スクリーニング | スクリーニング結果の評価、介入必要性の判断 |
アセスメント | 食事摂取状況、体重変化の観察 | 詳細な栄養アセスメント、必要栄養量の算出 |
計画立案 | 患者の嗜好・摂取能力の情報提供 | 個別栄養計画の立案、栄養ルートの検討 |
実施 | 計画に基づく食事介助、摂取量モニタリング | 栄養剤の選定、投与方法の指導 |
評価 | 皮膚状態の変化、摂取状況の評価 | 栄養指標の評価、計画の見直し |
多くの医療機関では、NSTと褥瘡対策チームが連携して活動しています。
例えば、褥瘡を保有する患者さんや褥瘡発生リスクがある患者さんに対して、医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフ・臨床検査技師・管理栄養士がチームとなり、週1回のカンファレンス・回診を行うといった取り組みが行われています。
効果的な連携のためには、定期的なコミュニケーションが不可欠です。
褥瘡対策委員会とNSTの合同カンファレンスを開催したり、電子カルテ上で情報共有システムを構築したりすることで、シームレスな連携が可能になります。
また、看護師はNSTとの連携において重要な役割を担います。
患者さんの日々の状態変化や食事摂取状況をモニタリングし、タイムリーにNSTに情報提供することで、より効果的な栄養介入が可能になります。
褥瘡予防は多職種連携が鍵です。
栄養管理を通じて褥瘡予防に取り組むことで、患者さんのQOL向上と医療の質改善に貢献しましょう!✨

褥瘡予防ケアの質を高めるためには、適切な記録と評価が欠かせません。
日本は高齢化率の高さにもかかわらず、褥瘡の有病率が諸外国より低いことが知られていますが、これはチーム医療や体圧分散寝具といった資源の活用と、予防に対するインセンティブ評価が功を奏しているからです。
褥瘡予防は単なる個人の技術ではなく、組織的な取り組みとして継続的な評価と改善が求められます。
ここでは、褥瘡予防ケアの質を高めるための記録方法や評価指標、成功事例から最新の研究動向まで、実践に役立つポイントをご紹介します!
褥瘡予防ケアの質を客観的に評価するためには、適切な質指標(Quality Indicator: QI)の設定とPDCAサイクルの活用が重要です。
QIを用いることで、ケアの質を可視化し、継続的な改善につなげることができます。🔍
- 褥瘡有病率:入院患者のうち褥瘡を有する患者の割合
- 褥瘡発生率:新規に褥瘡が発生した患者の割合
- 持ち込み褥瘡率:入院時にすでに褥瘡を有していた患者の割合
- 褥瘡改善率:ケア介入により褥瘡が改善した割合
- 褥瘡リスクアセスメント実施率:入院患者に対するリスク評価の実施率
これらの指標を定期的に測定・評価することで、自施設の褥瘡予防ケアの質を客観的に把握できます。
特に褥瘡発生率は、多くの医療機関で1%未満を目標としており、この数値を維持するためには継続的な評価と改善が必要です。
- Plan(計画):現状分析に基づく褥瘡予防計画の立案
- Do(実行):計画に基づくケアの実施
- Check(評価):QI指標を用いた評価
- Action(改善):評価結果に基づく改善策の実施
松山赤十字病院では、褥瘡回診チームが医師・看護師・薬剤師・作業療法士・栄養士で構成され、PDCAサイクルを回しながら褥瘡予防対策を実施しています。
このようなチーム医療の推進が、褥瘡予防ケアの質向上に貢献しています。
評価サイクルを効果的に回すためには、データの継続的な収集と分析が不可欠です。
最近では、CHASEなどのデータベースへの情報提出とフィードバックの活用が推奨されており、科学的根拠に基づいた褥瘡予防ケアの実践につながっています。
褥瘡予防ケアの記録は、ケアの継続性を保ち、法的にも重要な役割を果たします。
効率的かつ正確な記録方法を身につけることで、業務の効率化とケアの質向上の両立が可能になります。✍️
- リスクアセスメントの結果を明確に記載
- 予防計画の具体的内容を記載
- 実施したケアの内容と患者の反応を記録
- 定期的な再評価の結果を記載
特に褥瘡対策計画書は、リスク評価と予防計画を一体化した重要な記録です。
計画書には基本情報、危険因子の評価、具体的な看護計画を記載します。
看護計画 | 留意する項目 | 計画の内容 |
---|---|---|
圧迫・ずれ力の排除 | ベッド上 | ・2時間ごとの体位変換・除圧 ・体圧分散マットレスの導入 ・適切なポジショニング |
スキンケア | ・保湿剤の塗布 ・定期的なオムツ交換 ・失禁の有無・頻度の把握 |
|
栄養状態改善 | ・血液データの確認 ・栄養補助食品の選定 ・食事摂取量の把握 |
記録の際は、SOAP形式を活用すると情報が整理しやすくなります:
- S(主観的情報):患者の訴え
- O(客観的情報):観察結果(「仙骨部に2cm×3cmの発赤あり、ブランチングテスト陽性」など)
- A(アセスメント):評価結果(「ブレーデンスケール15点、褥瘡発生リスク中等度」など)
- P(計画):ケア計画(「2時間ごとの体位変換、エアマットレス使用継続」など)
記録の効率化のためには、電子カルテのテンプレート機能を活用したり、よく使用する文章のひな形を準備しておくと良いでしょう。
また、DESIGN-R2020などの評価スケールを活用することで、褥瘡の状態を統一的に評価・記録することができます。
褥瘡発生率の低減に成功した施設では、組織的かつ継続的な取り組みが行われています。
これらの成功事例から学ぶことで、自施設での褥瘡予防ケアの質向上につなげることができます。🏆
南部病院では、スタッフのスキルアップやカンファレンスの実施など組織的に取り組みを展開した結果、褥瘡の発生率が大幅に低減しました。特に統一したケア方法の確立と実践が成功の鍵となっています。
ある施設では、患者個々の適正なデータと情報をもとにPDCAサイクルを活用し、患者個々、部署、院内全体の課題を明確にして質の改善を図るという視点で褥瘡発生率を1%未満に維持することに成功しています。
具体的には以下の取り組みが効果的でした:
-
:入院時から定期的なリスク評価を実施
-
:医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリスタッフによる褥瘡対策チームの結成
-
:エビデンスに基づくケア方法の標準化
-
:専門チームによる定期的な評価と介入
-
:スタッフ教育と知識・技術の向上
特に注目すべきは、「特別養護老人ホーム六甲の館」の取り組みです。
看護師がノーリフトケアを推進し、移乗介助業務における介護士の腰痛予防と利用者の褥瘡発生予防を同時に実現しました。
この取り組みにより、移乗介助業務にかかる時間および褥瘡発生数の減少を達成しています。
これらの事例から、褥瘡予防には「個別のケア」と「組織的な取り組み」の両方が重要であることがわかります。
特に、データに基づく評価と改善のサイクルを継続的に回すことが、褥瘡発生率の低減につながっています。
褥瘡予防ケアの分野では、常に新しい研究と技術開発が進められています。
最新の研究動向を知ることで、より効果的な予防ケアの実践につなげることができます。🔬
東京大学の研究では、DPCデータなどのリアルワールドデータ(RWD)を用いた褥瘡発生予測の研究が進められています。
この研究から得られた知見として:
- 入院時褥瘡を防ぐには家庭での褥瘡予防ケアが重要
- 入院中の褥瘡治癒促進は在宅復帰の促進につながる
- 入院中の新規褥瘡発生予防は在宅復帰のために最も優先度が高い
特に注目すべきは、教師あり機械学習を用いた褥瘡発生予測モデルの開発です。
これにより、従来のリスクアセスメントスケールを上回る精度での予測が可能になりつつあります。
将来的には、患者の状況変化に応じてリアルタイムで褥瘡発生リスクを自動的に更新し、予防策をリコメンドするシステムの実装が期待されています。
日本は世界で最も褥瘡発生・有病率が低い国として評価されていますが、終末期の褥瘡対策はまだ課題が残されています。
特に、ケネディ終末期潰瘍(KTU)のような終末期特有の皮膚変化と褥瘡の区別や、終末期における褥瘡ケアの目標設定に関する研究が進められています。
- AIを活用した褥瘡リスク予測システムの臨床導入
- ウェアラブルデバイスによる持続的な体圧モニタリング
- 個別化された褥瘡予防プロトコルの開発
- 在宅・施設間での継続的な褥瘡予防ケアの連携強化
褥瘡予防ケアの分野は、テクノロジーの進化とともに大きく変わりつつあります。
しかし、どんなに技術が進化しても、患者一人ひとりを丁寧に観察し、個別性を重視したケアを提供する看護師の役割は変わりません。
最新の研究知見を取り入れながら、基本に忠実なケアを提供することが重要です。
褥瘡予防ケアの質向上には、看護師の知識・技術の向上が不可欠です。
効果的な教育プログラムを実施することで、スタッフ全体のケアの質を高めることができます。👩⚕️
-
:褥瘡発生メカニズムと要因の理解
-
:リスク評価ツールの適切な使用方法
-
:体位変換、ポジショニング、スキンケアなど
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:チームアプローチの重要性の理解
-
:実際の症例を通じた学習
-
:基礎から応用へと段階的に学べるプログラム設計
-
:体圧分散やポジショニングの実技演習
-
:定期的な研修会やカンファレンスの開催
-
:実践後の振り返りと改善点の共有
-
:効果的なケアの事例紹介
特に、「スキルアップ看護セミナー」などの褥瘡ケアの実践基礎コースでは、以下のような内容が扱われています:
-
褥瘡発生要因とリスクアセスメント
-
体圧分散とポジショニング(演習含む)
-
予防的スキンケアと栄養管理
教育プログラムの効果を高めるためには、知識の提供だけでなく、実践的なスキルの習得を重視することが大切です。
例えば、体圧測定器を使った実習や、実際の患者事例を用いたケースカンファレンスなどが効果的です。
また、看護補助者も含めた教育も重要です。北里大学病院では「看護補助者の拡大チーム」の編成と「看護補助者ラダー」の導入により、看護補助者のスキルアップと定着率向上を実現しています。
褥瘡予防は看護師だけでなく、チーム全体で取り組むべき課題であることを認識し、多職種を対象とした教育プログラムの実施も検討するとよいでしょう。
教育プログラムの効果を評価するためには、参加者の知識・技術の向上だけでなく、実際の褥瘡発生率の変化も指標とすることが重要です。
教育と実践、そして評価のサイクルを継続的に回すことで、褥瘡予防ケアの質を持続的に向上させることができます💫
褥瘡予防は患者さんの尊厳を守る看護の基本技術 ~あなたの手で実現する安全で快適なケア~
褥瘡予防は単なる皮膚トラブルの予防ではなく、患者さんの尊厳とQOLを守るための重要な看護実践です。
本記事で解説した科学的根拠に基づく褥瘡予防の5つの基本原則、30度側臥位の正確な実践方法、体圧分散寝具の適切な選択、スキンケアと栄養管理のプロトコルを日々の看護実践に取り入れることで、褥瘡発生率の低減が実現できます。
看護師の皆さんには、患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別的なケアと、チーム全体での組織的な取り組みの両方が求められています。
最新のエビデンスと技術を学び続けながらも、患者さんへの思いやりと観察の目を忘れないことが、褥瘡予防の真髄です。