「失語症の患者さんと話がかみ合わなくて困った…」そんな経験はありませんか?
理解できているのか、話せないだけなのかが分からず、対応に迷ってしまうこともありますよね。
この記事では
- 失語症の種類と症状の違い
- 急性期での観察・アセスメントのポイント
- 看護に使えるコミュニケーション技法
が分かりますよ♪
結論👉
失語症は「話せない=理解できない」ではありません。
種類によって症状が異なるため、正しい観察とコミュニケーション方法を知ることで、患者さんのストレスを大きく減らすことができます。
この記事では、失語症の基礎知識から急性期の看護、種類別のコミュニケーション方法までをやさしく解説します😊
1. 失語症とは?まず理解したい基礎知識
失語症とは、脳の言語を司る領域が損傷することで、理解や表現がむずかしくなる症状のことを指します。
声帯や口の動きに異常があるわけではなく、「ことばを理解する」「話す」「読む」「書く」といった機能が脳の障害によってうまく働かなくなる状態です。
特に脳梗塞・脳出血など、左大脳半球の損傷で起こりやすいとされています。
つまり、急性期病棟では頻繁に遭遇する症状であり、看護師として理解しておくことが大切です。
ここで押さえたいのは、「話せない=理解できない」ではないという点です。
種類によっては理解力はしっかり保たれているのに、発話だけがむずかしいケースもあります。
1-1. 失語症の原因と発症メカニズム
失語症は多くの場合、突然発症します。
もっとも一般的な原因は以下の疾患です。
- 脳梗塞(特に中大脳動脈領域)
- 脳出血・くも膜下出血
- 頭部外傷
脳の「ブローカ野(発話)」や「ウェルニッケ野(理解)」が損傷すると、それぞれ対応する能力が低下します。
つまり、どの領域がどの程度傷ついたかによって症状は大きく変わるのです。
1-2. 失語症の主な種類(ブローカ・ウェルニッケ・全失語ほか)
失語症にはいくつかのタイプがあり、特徴を理解しておくことで、患者さんの反応の“意味”が分かりやすくなります。
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| 種類 | 特徴 | 看護でのポイント |
|---|---|---|
| ブローカ失語(運動性) | 理解は比較的良好だが、ことばが出にくい。 | 短く区切って説明し、焦らせない。 |
| ウェルニッケ失語(感覚性) | 聞いたことばの理解が低下し、流暢だが意味が通らない発話。 | 視覚情報(指差し・絵カード)を活用。 |
| 全失語 | 理解・表出ともに大きく低下。 | 非言語コミュニケーションが中心。 |
このように、症状はタイプによって大きく異なります。
急性期では評価が安定しにくいため、「今日は理解できている」「今日は反応が薄い」といった日内変動もあります。
1-3. 失語症と認知症・失声症との違い
臨床でよく誤解されるのが、「失語症=認知症の一種」という誤解です。
失語症は記憶や判断力の障害ではなく、あくまで言語機能の障害です。
一方、認知症では記憶・判断・実行機能なども影響を受けます。
また「失声症(声が出ない)」とは異なり、失語症では声帯や発声器官が正常であってもことばが出ません。
この違いを理解することで、看護師は患者さんの反応をより正しく捉えられるようになります。

焦らず、まずは「理解はあるか?」から見ていくと良いですよ。
2. 急性期における失語症患者の観察とアセスメント
急性期では、言語障害の評価よりもまず全身状態の安定と安全確保が優先されます。
失語症は脳の損傷によって引き起こされるため、同時に意識障害・嚥下障害・麻痺などを併発することも少なくありません。
また、急性期の失語症は症状が変動しやすく、朝と夕方で反応が全く違うこともあります。
日内変動を含めて丁寧に観察することが重要です。
2-1. 意識レベル・理解力・応答の観察
失語症患者さんとのコミュニケーションでは、「反応がない=理解していない」ではない点に注意が必要です。
返答できなくても、聞こえて理解しているケースは多くあります。
観察のポイントとして、以下のような視点が有効です。
- うなずき・視線・表情による反応を確認する
- 単語・短文での指示が通るかをみる(例:「手を握って」)
- 声かけへの反応に時間差がないかをみる
失語症は“応答の遅れ”がよく見られるため、返事を急かさず、十分な待ち時間を設けて観察しましょう。
2-2. 飲み込み(嚥下)・呼吸状態・誤嚥のリスク評価
失語症と聞くと「言葉の障害」を想像しがちですが、実は嚥下障害を併発することが多く、誤嚥リスクが高い状態です。
特に脳梗塞直後は麻痺や意識低下により、食事・水分摂取の安全確認が欠かせません。
観察すべき点としては、次のような項目があります。
- むせの有無、湿性嗄声(ごろついた声)がないか
- 呼吸パターンの変化(努力呼吸・呼吸回数の増加)
- 食事中の疲労・集中の低下
食事形態や姿勢の調整はもちろんですが、誤嚥の兆候を早い段階でキャッチできるかが、急性期看護の大きな役割になります。
2-3. 行動・感情面の変化(不安・怒り・無気力)
失語症の患者さんは、自分の気持ちを言葉にできないもどかしさから、不安・焦り・怒りなどの感情が強く出ることがあります。
また、全く発話ができない時期には無気力に見えることもあります。
看護では、表情・動作・態度の変化に敏感になることが大切です。
急性期ではせん妄を発症するリスクもあるため、環境調整(照明・昼夜リズム・過刺激の調整)も観察と合わせて行っていきます。

返事がなくても、理解はできているケースが多いですよ😊
3. 看護師が知っておきたいコミュニケーション技法
失語症の患者さんとのコミュニケーションでは、「種類によって対応を変える」ことがとても大切です。
言語の理解・表出のどちらが障害されているかによって、声のかけ方や支援方法が大きく変わるためです。
また、言葉が通じにくい状況は患者さんにとって強いストレスとなりやすく、尊厳を守る関わり方も欠かせません。
また回復までに長期間必要な場合もあります。
根気強くかかわりを持ちましょう。

3-1. 種類別の声かけ・コミュニケーション方法
代表的な3タイプの特徴に応じて、看護での対応ポイントを整理します。
| 種類 | 特徴 | 効果的なコミュニケーション方法 |
|---|---|---|
| ブローカ失語 (運動性) |
理解は保たれているが、言葉が出にくい。 | ・ゆっくり話す ・短い文で区切る ・Yes/Noで答えられる質問にする ・急かさず、十分な待ち時間をとる |
| ウェルニッケ失語 (感覚性) |
聞いた言葉の理解が低下し、話は流暢だが意味が通りにくい。 | ・絵カードや写真など視覚情報を活用 ・ゆっくり、はっきり話す ・重要な言葉を繰り返す ・指差しやジェスチャーを組み合わせる |
| 全失語 | 理解・表出ともに大きく低下。 | ・表情・身振りを大切にする ・Yes/Noカードの利用 ・短い単語と視覚刺激で伝える ・「伝わらなくても責めない」姿勢が最も重要 |
種類に応じた対応を意識することで、患者さんは“理解してもらえた”と感じ、安心しやすくなります。
3-2. 患者の尊厳を守る関わり方
失語症の患者さんは、言いたいことが言えないもどかしさや、自分の状態への不安を強く感じています。
そのため、看護師の対応が心理的負担を大きく左右します。
- 子ども扱いしない(語尾やテンションに注意)
- 「できない人」と決めつけた声かけを避ける
- 患者さんの選択肢を奪わず、意思決定を尊重する
尊厳を守る関わりは、患者さんの回復意欲にもつながります。
特に急性期では「混乱しているから聞こえていない」という誤解が起こりやすいため、丁寧に寄り添う姿勢が重要です。
3-3. 家族への説明ポイント(現場でよく聞かれる質問)
家族は「ちゃんと治るのか?」「どう接したらいいのか?」という不安を強く抱えています。
看護師が分かりやすく説明できると、家族の安心と支援力が高まります。
家族支援で押さえたいポイントは次の通りです。
- 「話せない=理解できない」わけではないと説明する
- 大声で繰り返すより、ゆっくり短く伝える方が効果的
- 否定的な言葉より、成功経験を増やす声かけを勧める
また家族が焦りから過度に訓練しようとすることがありますが、疲労は逆効果になるため、「短時間で、成功の積み重ねを大切にしましょう」と伝えると安心されます。

できることを一緒に見つける姿勢が大切ですね😊
4. ST(言語聴覚士)との連携ポイント
失語症の患者さんのケアでは、ST(言語聴覚士)は中心的な専門職です。
しかしSTが介入するまでの期間や、リハビリの前後で看護師が把握しておくべき情報は多くあります。
看護師が観察した“患者さんのその日の状態”は、STの評価や訓練方針に大きく影響するため、情報共有の質がリハビリ効果を左右すると言っても過言ではありません。
4-1. 失語症評価(SLTA)の理解と看護への応用
STが実施する代表的な評価に、SLTA(標準失語症検査)があります。
これは「話す・聞く・読む・書く」などの能力を多面的に評価する検査です。
看護師がSLTAを詳細に覚える必要はありませんが、次のような点を把握しておくとアセスメントに役立ちます。
- 患者さんがどの領域を苦手としているか(理解・表出・読み書き)
- 評価後の疲労や混乱がないかを観察し、必要時に休息を確保する
- 検査結果をもとに、声かけや説明方法を調整する
SLTAの結果は、看護師が日常的に行うコミュニケーションの「ヒント」にもなります。
4-2. 情報共有すべき項目とタイミング
失語症の症状は日によって変わることがあり、患者さんの“リアルな状態”を把握しているのは看護師であることが多いです。
STと連携する際は、次のような項目を共有すると効果的です。
- 日内変動(朝と夕方の反応の違い)
- 疲労や集中の保ち具合
- 指示理解の程度・返答のスピード
- 嚥下の様子・食事中の変化
連携のタイミングとしては、STが訓練を始める前と訓練後の変化を把握して伝えると、評価に活かされやすくなります。
4-3. リハビリ開始前後での看護ケアの違い
リハビリ開始直後は、患者さんが疲れやすくなるため、疲労コントロールが重要です。
疲れすぎると反応が鈍くなったり、誤嚥のリスクが上がったりすることがあります。
看護ケアでは以下の視点を意識しましょう。
- 訓練前にトイレ・水分補給などを整える
- 訓練直後は休息時間を十分に確保する
- 反応が低下した際は、疲労の有無をまずアセスメントする
- 患者さんの達成感を尊重し、小さな成功体験を共有する
回復期に進むにつれて、看護師は「患者さんができることを増やすサポート」に重点を移し、STと協力しながら目標を確認していきます。

STさんが見られない“日常の様子”を伝えるだけで、リハビリの質がぐっと高まりますよ😊
✅まとめ|この記事で学べる「失語症の看護」
この記事のまとめポイント
この記事での再重要部位👉
- 失語症は「話せない=理解できない」ではない
- 急性期では全身状態の安定と日内変動の観察が重要
- 種類別にコミュニケーション方法を使い分けると安全・安心につながる
記事のまとめ
失語症の患者さんと向き合うとき、最初は「どう伝えたらいいのだろう…」と戸惑うものです。
ですが、症状の種類と特徴を理解し、ゆっくり・短く・分かりやすく関わることで、患者さんとのコミュニケーションは確実に改善していきます。
急性期では全身状態の観察やせん妄予防、誤嚥リスクの把握など、看護師だからこそ気づけるポイントがたくさんあります。
あなたの丁寧な観察と声かけが、患者さんの安心と回復への大きな支えになりますよ😊
明日からのケアで、少しでもこの記事の内容が役に立ちますように✨

